職場で「いじめ」のターゲットになったとき② 「いじめ」を収束させて残ったもの
職場で、「いじめ」のターゲットになったとき。
「いじめ」の本質、被害者の心境、対処法を知る、絶好の機会!
そう自分に言い聞かせて、1つずつできることを重ねていきました。
今回は、私が取った「いじめを収束させた方法」、そして、「いじめを収束させて残ったもの」について、お伝えします。
「いじめ」が起こるメカニズムを見極める
職場で「いじめ」のターゲットになり、「いじめ」に対処するにあたって。
まずは、職場で「いじめ」が起こるメカニズムについて、考えてみました。
「傾向と対策」と言うように、「対策」を打ち出すには、「傾向」を把握することが大切だからです。
私が「いじめ」のターゲットになった職場の状況、特に人間模様を、1年にわたって観察して、分かったことがありました。
- 心理カウンセリング業務は、業績を評価しづらいため、職場内での評価は、直属の上司の判断で決まる傾向がある。
- あるベテランスタッフ(Aさん)の意見で、直属の上司が、部下に対する評価を変えるときがある。
- 「いじめ」を先導する2人は、Aさんから、目をかけられている。
- 職場内のスタッフは、Aさんや、「いじめ」を先導する2人に、一目置いている。
↓ - Aさんが、実は、職場内で大きな権力を持っている、ラスボスだった。
- Aさんに嫌われた人が、「いじめ」のターゲットになる。
↓ - この職場で働いている人の多くが、「職場内での自分の評価」を気にしている。
- 「職場内での自分の評価」を少しでも上げたいという思いが重なって、「いじめ」が生じ、黙認されている。
全容とまではいかないまでも、だいたいの「傾向」が分かってきました。
次は、対策を練り、「いじめ」を収束させるための行動を開始します。
「いじめ」を収束させるために行動する
「いじめが起こるメカニズム」が、見えてきたところで。
「いじめを収束させるための作戦」を考えました。
「いじめ」のラスボスとは、ほどよい距離をとる
「いじめ」のラスボスだと、私が認定した、ベテランスタッフ、Aさん。
どうやら、私は、いつの間にか、Aさんに嫌われてしまったらしい。
Aさんとは、そんなに関わった覚えがないのに……。
そこで、Aさんが、私を嫌った理由を考えてみると。
- Aさんに対する私のリスペクトが足りなかった?
- 私がAさんの好みのタイプではなかった?
- 過去に私に似たタイプと因縁があって、うらみを晴らしたい?
Aさんの様子を観察してはみたものの、残念ながら、ハッキリとした理由は分かりませんでした。
そのため、Aさんと、仕事上で関わるときは、「ほどよい距離」をとることにしました。
距離が遠すぎると、相手が敬遠されたと思って、不快になる。
距離が近すぎると、相手との関係が密になり過ぎるから、トラブルが生じやすくなる。
そこで、「ほどよい距離」。
Aさんが話しかけてきたときは、愛想よく、受け答えします。
そして、私からは、雑談も含めて、話しかけません。
機嫌をとることはせず、積極的に関わらないけれど、愛想はいい、というスタンス。
Aさんは、敏感な人だったので、私から、得体の知れない、不気味な感じを受け取ったのかもしれません。
あるとき、私に小さなプレゼントをくれました。
小さなプレゼントから、好意ではなく、「私を攻撃しないで」というメッセージを感じた私。
プレゼントを笑顔で受け取りつつ、「ほどよい距離」をキープしました。
「いじめ」を先導する2人の良いところを見つけてほめる
「いじめ」を先導する2人を見ていて、気づいたことがあります。
- Aさんと同じ(藤野が好きではない)スタンスであることをアピールしている。
- Aさん寄りのスタンスをとることで、Aさんからの評価を上げようとしている。
- ひいては、Aさんの口利きで、直属の上司からの評価を上げようとしている。
そこで、私は、「相手が評価を求めているなら、相手に評価を与える」という作戦を思いつきました。
つまり、「いじめを先導する2人の良いところを見つけてほめる」という作戦です。
自分をいじめる相手をほめるなんてこと、嫌でたまらないっていう人、結構、いるんじゃないんでしょうか。
私だって、正直、イヤです。
ですが、私は、職場内の「いじめ」で心を削られ、「できることなら何でもやってやる!」と思うぐらい、追いつめられていたのでね。
死ぬ気になれば、嫌な相手の優れた面が見えてきます。
どんな嫌な相手でも、嫌なところばかりで出来上がっている訳ではありませんからね。
背に腹は代えられない、物は試しということで。
私は、「相手の良いところをほめる」という作戦を実践してみました。
すると、あんなに意地悪だった2人の態度が、だんだんやわらいでいくではありませんか。
思いがけないほどの効果に、私のほうが驚いてしまいました。
「相手の良いところほめる」という作戦を実施してから、1年が経つ頃。
私に対する「いじめ」と呼べるような言動は、随分と減っていきました。
直属の上司より上の立場の人に動いてもらう
入社して3年目に入ると、私に対する「いじめ」は、随分とやわらいできました。
ですが、少し安心すると、恨みがましい気持ちがわいてくるのです。
「いじめの首謀者」が許せない。
そんな折、係長クラスの上司が、私のいる職場に異動してきました。
その上司とやり取りする機会は少なかったのですが、これまでの上司と比べ、「職員に対して理解がある人」という感触を得たのです。
年末に1回、係長と面談をおこなうことになっていたので、そのときがチャンス!
それまでの2年間、「自力で頑張る」というアプローチをとってきた私。
「自分以外の力を借りる」、絶好の機会が、到来したと感じました。
係長との面談に際して、気をつけたことは、以下の通り。
- 自分が「いじめ」を受けていたことを、感情的に訴えることはしない。
- 「いじめ」を先導する2人の言動に、「職務上の不利益」があることを、客観的に伝える。
- 職務上の不利益が横行するベースに、「直属の上司の管理不足」があることも、客観的に伝える。
- 「利用者の満足度を上げるためには、職場環境の改善が必要」と伝える。
- 同期入社の2人にも協力を願い、面談では、私と同じようなことを係長に伝えてもらう。
職場の上司に対して感情的に訴えると、相手はうんざりして、「君の考えすぎだろう」と受け流されてしまうに違いない。
そのため、冷静、かつ、客観的に伝え、「職場の利益を損ねていて、心を痛めている」ということを主張する。
あれこれ考えて練り上げた私の作戦は、ヒットしました!
面談後、係長は、職員全員の仕事ぶりを、折にふれて、見にくるようになりました。
そして、「いじめ」を先導する2人には、年度末、降格と思われるような人事がおります。
2人が、仕事の手を抜く、お気に入りのスタッフに過干渉な関わりをするといったことが、明らかになったからです。
降格人事をくらってガックリきている2人を見て、私は「してやったり」と、胸をなでおろしました。
「いじめ」を収束させて残ったもの
職場内で、私に対する「いじめ」は、収束しました。
ですが、私は、ものすごく恐ろしいものを目の当たりにすることになったのです。
「いじめの首謀者」2人が、降格と思われるような人事を受けたあと。
なんと、「いじめの観衆・傍観者」が、てのひらを返したような対応を見せるようになったのです!
以前は、「いじめの首謀者」を先輩として立て、ゴマをするような態度を取っていたのに。
「いじめの首謀者」に対して、話しかけることも減っていき、話しかけられても素っ気ない態度をとるという豹変ぶり。
怖すぎる、怖すぎる。
「いじめの観衆・傍観者」は、一見すると「みな善人」といった感じであるだけに、怖さが倍増。
「いじめ」の加害者が、立場が変わったことによって、「いじめ」の被害者になった。
単に、「いじめ」のターゲットが、移り変わっただけ。
つまり、「いじめ」が起こる環境は、変わっていなかった!
一見すると善人に見える人間が、心の内側に抱える残虐さを思い知り、怖ろしくなりました。
しかも、「いじめ」の被害者だった私も、「勧善懲悪」なんて思っていたけど、加害者として、2人を陥れたではないか。
人間不信、自分不信に陥っていく私。
職場での「いじめ」を根本的になくすためには、どうしたらいいのか。
そんなことを考えるようにもなりました。
「いじめ」はカビと同じ
職場内で「いじめ」を体験して、あれこれ考えるうちに。
「いじめはカビを同じ」ということに気づきました。
カビは、空気中にウヨウヨ漂っています。
病院や工場の無菌室など、特別な場所を除けば、カビがまったくないという環境はありません。
ですが、カビが繁殖する場所もあれば、カビが生えない場所もある。
何が違うのか。
もう、お分かりですね。
カビを育つ条件が整っているか、整っていないか、それだけの違いです。
温度、湿度、栄養源。
この3つの条件がそろうと、カビが繁殖し、カビだらけになります。
カビと同じように、「いじめのもと」となるようなものは、どの人間の中にもあります。
自分が評価されたいとか、ストレスがたまっているとか、相手を嫌だと思う気持ちとか。
そして、職場において、以下の条件がそろうと、「いじめのもと」が「いじめ」へと大きく育っていきます。
職場の構成メンバーが、自分の内側に「いじめのもと」があることに無自覚である。
職場を率いる上の立場の人間が、「いじめ」があっても仕方がないと考えている。
職場内の構成メンバーが、あまり変わらず、人間関係が固定化する。
結局、職場の環境を作るのは、私たち一人一人。
私も、良い人ぶることなく、「いじめのもと」が自分自身にもあると自覚しながら、働いています。
職場での「いじめ」体験は、なかなかにツライものでした。
とはいえ、「いじめ」をくぐり抜けた今、「いじめ」に対する理解が、体感レベルで深まりました。
学校でスクールカウンセラーとして働く際、「いじめ」体験が、子どもたちの「いじめ」防止に役立っています。
本当に人生はプラスマイナスゼロです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※職場で「いじめ」にあった際、取り組むための姿勢をじっくり検討したことについては、こちら。