キライだった自分を認められるようになったヒケツ「心は集合体」
母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。
「自分を生きる」ために、努力を重ねていきます。
悪戦苦闘、試行錯誤の末。
なんと、あんなにキライだった自分を受け入れ、認めることができるようになっていきました。
自分を受け入れることができるようになった「ヒケツ」について、お伝えします。
自分のことがキライだった私
私は自分のことがキライでした。
高校時代から「自分のことがキライ」と感じていましたが、ひどくなったのは、社会人2年目のとき。
部署が異動になったことをきっかけに、メンタルがやられました。
事あるごとに、ダメな自分を嘆き、別人になりたいと切望する日々。
自分に自信がなくて、自分のことがキライなのは、全部母のせいだ。
私が幼い頃から、気に入らないことがあると、私を罵倒し、ののしっていた母が悪い。
そんな風に思って、母を恨んでいたものの。
自己探究を重ねていくにつれ、母が悪いのではないということが身にしみていきます。
たしかに、私のことを頭ごなしに罵倒するといった母の関わりは、適切ではありません。
ですが、母自身も、生い立ちの中でツライ体験を重ねてきただけでなく、就職してからは職場いじめに、結婚してからは嫁姑関係に苦しんでいました。
母は精神的にとても不安定で、幼い私に穏やかに接するゆとりがなかったのでしょう。
母への怒りがおさまっていくと、私の苦しみの根源は、私の中にあることが分かってきました。
母との関係が影響してはいるものの、私自身の中に、自分を責め、自分を否定する部分があり、それらが活性化するから、苦しくなるのです。
自分を責め、自分を否定する声が、頭の中で鳴り響き、心の内側から削られていきます。
ある意味、自分で自分の首を絞めるような、不毛なことをくり返している私。
そんな自分が、本当にイヤでイヤでたまらず、大キライでした。
自分を認めることができるようになったのは
自己否定が強く、自分がキライだった私。
そんな私が、今では、自分を受け入れ、自分を認めることができるようになっています。
過去の私が見たら、仰天するに違いありません。
自己否定が強く、自分がキライでたまらない、私のようなタイプが、自分を受け入れることができるようになったのは、どうしてなのか?
自分なりに振り返り、「これが、ヒケツ」と思ったのが。
「心は集合体」という認識。
つまり、「心の中にはいくつもの存在がある」と気づき、各々の存在との対話を重ねたこと。
ええっ!?
自分が多重人格(解離性同一性障害)だと、気づいたってこと!?
そう思ったあなたは、ある意味、常識人です。
現代社会では、「自分の心は1つしかなく、そこから全ての思考や感情、欲求や衝動が立ち現れる」という見方が浸透しているからです。
それに、「多重人格(解離性同一性障害)」に関するセンセーショナルな情報が飛び交っているので、「心の中にいくつもの存在がいる、なんて言う人は、異常者だ」という認識が定着しているのでしょう。
「心は集合体」は私の妄想ではなかった
「心は集合体」という考えを受け入れがたいと思っているあなた。
あなた自身にも、自分の中に、「ひと筋縄ではいかない思い」はありませんか。
たとえば、ダイエットを試みるとき、あなたの心の中に、こんな存在がいるのではないかしら。
- 健康や美容のために、暴飲暴食を控えて、飲食の量を減らそうと考えている存在(頑張り屋さん)。
- 健康や美容に悪いとしても、「思う存分、食べたい!」と切望している存在(欲張りさん)。
- つい食べ過ぎてしまったら、「決めたことをまっとうできないなんて、本当に情けない」と、自分を責める存在(批判家さん)。
- 「自分はダメだなあ」と落ち込んでしまう存在(繊細さん)。
4つの存在を思い描いて、勝手に名前をつけてみました。
この4つの存在が、互いに立ち現れ、ときには、バトルを繰り広げる。
あなたにも、思い当たる節があるのではないでしょうか。
私も、自己探究を重ねていく過程で、私の心の中に、いくつかの存在があることに気づいただけです。
多重人格(解離性同一性障害)ではありません。
そして、心の中にある各々の存在と対話するうちに、自己理解がはかられていき、自分を受け入れることができるようになったのです。
ちなみに、心理学の分野において、NLP心理学(原田、2016)、内的家族システムモデル(シュワルツ、2024)では、「心は集合体」と考えており、心にある存在を「パーツ(パート)」あるいは「サブキャラクター(副人格)」と呼んでいます。
NLP心理学でも、内的家族システムモデルでも、個人の心の内側にある「パーツ」を浮かび上がらせ、「パーツ」と対話し、「パーツ」の個性や「パーツ」同士の関係性を理解するというプロセスを経て、セラピー(心理療法)を行っていくようです。
それから、「インサイドヘッド」というアニメ映画では、主人公の頭の中に複数のキャラクター(感情を擬人化した存在)がいて、そのキャラクターたちの活動によって、主人公の日常生活に影響が出る様子が描かれています。
「インサイドヘッド」は、8~10人の神経学者の話を聞いて、制作されたとか。
なので、「心の中にいくつもの存在がいる」という認識は、私だけの妄想ではないんですよ。
「心は集合体」と認識するメリット
私の場合、自己探究を進めていった結果、「心は集合体」という認識にたどりつきました。
私が「心は集合体」と認識することで得られたメリットについてあげてみました。
自分の心のありようを客観視できる
「自分の心の中には、いくつもの存在がある」と認識すると、自分の心で起きていることを客観視しやすくなりました。
心の中にあるものを、自分とは別のものとして扱うことで、距離がとれ、客観的に観察することができるようになったのです。
ちなみに、心の中にあるものを、自分とは別のものとして考え、扱うことを、心理学の用語では、「外在化」と言います。
自分の心の中にある存在と対話ができる
自分の心の内にある存在を、客観的に観察できるようになると、心の中にある存在と対話ができるようになりました。
対話を重ねるうちに、各々の存在の思い、願いなどが明らかになっていきます。
私を否定し、責めさいなむ存在に悩まされていたのですが、そうした存在たちですら、私自身を守るために頑張っていることが、浮き彫りになってくるではありませんか。
すると、各々の存在が愛おしくなっていき、自分の中に敵がいなくなりました。
自分だと意識できている部分がしっかりしていく
自分の心の中にある存在を、客観的に観察し、各々の存在との対話を重ねていくと。
自分だと意識できている部分(主人格、セルフと呼ばれる)が、しっかりしていきました。
各々の存在に振り回されている状態から、主人格(セルフ)がリーダーシップを取れるようになったのです。
自分の心の中にある存在がチームとして活動できるようになる
自分だと意識できている部分(主人格、セルフ)が、しっかりしてくると、自分の心が「チーム」として活動できるようになりました。
落ち込むようなことがあっても、主人格(セルフ)がリーダーシップを取って、落ち込んでいる状況を客観的に観察し、何が起きているかを把握していきます。
そして、主人格(セルフ)が議長のような存在になり、心の中にある存在たちで会議を行うと。
心の中のある一部の存在がダメな自分を責めることによって、別の存在が落ち込んでしまうことがあっても、それとは違った存在から前向きな提案が出てくるのです。
次第に、心の中にある存在同士で補い合い、行動の選択肢が増えていき、心の安定がはかられるようになりました。
「心は集合体」と認識することの難しさ
私が、「心は集合体」と認識できるようになったのは、「ハコミセラピー」の学びを重ねたお陰です。
「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピー。
ちなみに、「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていく状態を言います。
「マインドフルネス」の状態になると、顕在化した意識が静かになっていき、無意識(潜在意識)にあるものが立ち現れてきます。
ある意味、自分に必要なものが、必要なタイミングで、無意識(潜在意識)から立ち現れてくるのです。
理解するというより、「感じる。気づく」という感覚のほうが、近いかもしれません。
ですから、頭だけで「心は集合体」という認識を理解しようとしても、表面的な理解に留まりがちです。
残念ながら、自分の心の中にある存在と対話するところにまでは、いたらないかもしれません。
また、その人にとって、「心は集合体」と認識するタイミングが重要です。
「マインドフルネス」で自分自身に起きていることを感じてみても、心の内側にある存在が浮かび上がってこない場合は、まだ、そのタイミングではないかもしれません。
それに、「心は集合体」という形から入ると、うまくいきません。
とりあえず、心の中にある存在にアクセスできたとしても、準備ができていない状態で無理に介入することになります。
無理なことをした後に、強い反動が返ってくるという形で、精神的な不調が現れるかもしれません。
心の中にある存在が、自分から顔を出してくるのを待つのが大切。
そのため、誰にでもすぐに実践できる訳ではないところが、難しいんです。
※「ハコミセラピー」について、詳しくは、こちら。
今回は、自分のことがキライだった私が自分を認めることができるようになったヒケツ、心は集合体という認識について、お伝えしました。
ちょっと抽象的な内容になってしまったので、今後、具体例を交えた記事を書いていきたいと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※私が自分の心の中にある複数の存在に気づき、自己理解に役立てていることについては、こちら。
※参考文献
原田幸治 (2016) 心を読み解く技術-NLPパート理論- 晶文社
リチャード・C・シュワルツ(著) 後藤ゆうこ・佐久間智子・後藤剛(訳) (2024) 「悪い私」はいない‐内的家族システムモデル(IFS)による全体性の回復- 日本能率協会マネジメントセンター