父の愛は「施し」ではなかった【私が自分を生きるまで⑯】

2026年9月17日

母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。

生きづらさを解消し、「自分を生きる」ために、自己探究を重ねていきます。  

 

自己探究の過程で、私の心の中にある、自分を「否定する部分(パーツ)」が少しずつ揺らいでいき、生きやすさを感じるようになったころ――。

母が私をけなすような言葉を遺して亡くなりました。  

 

深く傷つきながらも、つらい思いを抑え込み、現実で必要なことをこなしていった私。

しかし、さらに自己探究を続けると、激烈ではあるものの、母の愛情を体感することになりました。  

 

すると、これまであまり注目してこなかった父に対して、意識が向かっていきます。

父から愛されているとは思えなかった。

父の愛情は、徳の高い人からの「施し」だと思っていた。

なので、心のどこかで、寂しい思いを抱えていた。

そんな私でしたが、父からの愛情が本物であったと実感する体験をしたのです。  

 

今回は、父の愛情を「施し」だと思い込んでいた私が、その愛情が本物だったと気づいた、そのときの出来事について、お伝えします。

 

父から愛されているとは思えなかった

 

 

私の父は、とても優しい人でした。

父に怒られたことは、3回しかありません。  

  • 小学生だった私が、弟の背中を蹴り倒したとき。
  • 中学生だった私が、父方の祖父母を罵倒したとき。
  • 高校生だった私が、家に来たお客さんに無礼なことを言ったとき。  

 

振り返って驚きました。

父が大切に思っている人が傷つけられたときに、父は怒ったのです。  

 

私なんて、自分が傷ついたことで、私の息子を数えきれないほど怒っています。

いやはや、父の凄さに驚嘆するばかり。  

 

私自身、父が愛情深い人であるということは、よ~く分かっていました。

でも、私は、「父から愛されている」と感じることができなかったのです。

 

父は人徳者だから、私のようなダメ人間でも、愛情を注げる。

そんな風に考えていたからです。

 

父の愛情は、徳のある人からの「施し」としか思えません。

そのため、私は、「私に本当の愛情を注いでくれる人はいないんだなあ」と、寂しい思いを抱えていました。

 

父に思いをめぐらす

 

 

感謝を感じている人に対するエクササイズ

2022年5月。

私が所属している「ハコミセラピーの団体(JHEN)」※1 で、スペシャル企画ワークショップがおこなわれました。

カナダ人のシニアトレーナー、ジョージア・マービンさんをゲスト講師に迎えてのワークショップ。

テーマは、「人間関係が楽になる~マインドフルネス※2のさらなる可能性~」でした。  

 

※1:「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかける心理療法です。

※2:「マインドフルネス」とは、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていくことです。  

 

そのワークショップの中で、「感謝を感じている人に思いをめぐらす」というエクササイズがありました。  

 

父の優しい言動を思い出す

私の中に、ふと、浮かんだのが、父のこと。

父に思いをめぐらすと、父が私にしてくれたことが、1つ1つ思い出されます。

 

小学校低学年のとき

小学校入学と同時に、子ども部屋をもらった私は、夜になるとすごく怖くて、眠れなかった。

「お腹が痛い」とウソをついて両親の寝室へ行くと、父はすぐ目を覚まし、「大丈夫か」と言って、私を自分の布団に入れてくれた。

冷えきった足を父のお腹に乗せると、ほんとに温かくて、安心して、朝までぐっすり眠れた。  

 

小学校高学年のとき

家族でスキーに行き、上級者ゲレンデで動けなくなった私。

父は、私をおんぶして、下まで降ろしてくれた。

スキーがあまり得意ではない父は、途中で、何度も何度も転びながら。

私が、考えなしに上級者ゲレンデへ行ったことは、一切とがめなかった。  

 

結婚するとき

私の結婚に猛反対し、「結婚するなら、今までナオミにかけたお金を全額返せ!」と、怒り狂った母。

私が預金通帳を持って帰省したら、父は「通帳を持ってきたことは、知らなかったことにする。ママに手紙を書きなさい」と提案してくれた。

父の提案に従い、謝罪と感謝を書き連ねた手紙を出したら、母は機嫌を直し、結婚式に参列。

父だって、花嫁の父として、花婿(夫)に文句の一つも言いたかっただろうに。  

 

息子が生まれてから

息子(父にとっては孫)が生まれると、毎月、私たちを訪ねてきた父。

「美味しいものを食べて栄養をつけろ」と、父の馴染みのお寿司屋さんに行くのが定番のコース。

父は、息子と遊園地に行ったり、サッカーの練習にも同行したり。

私は、うちのリビングで、父と他愛のないおしゃべりをするのが楽しみだった。  

 

母が私をけなす言葉を遺して亡くなったとき

「ナオミは、バカでノロマで、肝心なときに役に立たない」という言葉を遺して、母が亡くなったとき。

困ったような表情を浮かべながらも、父は、「愚痴だと思え~」と言って、私を慰めてくれた。  

 

父の優しい言動が、次から次へと思い出されていくと――、

父への感謝が、胸の奥からわきあがってきました。  

 

ようやく父の愛を知る

 

 

父とのエピソードを、ワークショップに参加していたメンバーに語ったあと――。

私は、目をつぶって、ゆっくりと呼吸をしながら、「今この瞬間」に意識を向ける、マインドフルネスの状態になりました。

 

そして、「感謝する相手にかけたい言葉」を探していきます。  

すると、私の中でイメージが展開されていきました。  

 

父のお腹にしがみついている、幼い私。

幼い私は、「パパ。私もパパが大好き」と言っている。

そう言いながら、父のお腹に、ギューッとしがみつく。

まるで、大きなトトロのお腹にしがみついているみたい。  

 

私は、マインドフルネスの状態のまま、改めて、イメージの中にいる父に言葉をかけます。

 

パパ。

私もパパが大好き。  

 

父に声をかけると、幼い私と父の姿が、光の玉に覆われていきます。

温かい光に包まれていく私と父。

そして、私は、父の愛を全身で感じることができました。  

 

こんなにも愛情をかけてもらってきたのに、これまで全く気づかなかった。

父の愛を「施し」だと思っていたなんて。

無条件の愛って、こういうことなんだ。

ただただ、ありがたい。  

 

涙が止まりませんでした。

私は、父の真の愛に気づき、満たされた思いのまま、しばらく時間を過ごしました。

 

父の愛に気づけなかったのは私のせい

 

 

父の愛情は、私が小さい頃から、私に注がれていました。

そのことに全く気づかなかったのは、私が「私は誰からも愛されない、ダメな人間」と信じ込んでいたからです。  

 

でも、ようやく父の愛情を素直に受け入れることができたのは、母の愛情に気づいたことが影響しています。

とはいっても、母の愛情は、私には受けとめづらいほど激しい形のものなんですけれどね。  

 

母の愛情に気づいてから、「残念なところはいろいろあるけれど、私は愛されてもよい存在なのかもしれない」と思えるようになりました。

つまり、「愛情を注がれる価値はない」と信じ込んで、自ら閉ざしていたフタが、パカッと開いたんです。  

 

父の愛情が、じわじわと感じられていくと、気づいたことがあります。  

 

母に疎外され、つらい思いを重ねてきた幼い私を、父が精神的に守ってくれていた。

父のお陰で、精神疾患など発症せずに、生きることができたんだ。  

 

父のありがたみが、心の奥底にしみわたっていきました。  

 

このエクササイズを行った2ヶ月後、父が亡くなりました。

父には、心を込めた恩返しをすることができませんでした。

でも、「パパ、ごめんね」と言うと、「気にすんな~」と父が笑っている気がします。  

 

それに、父の愛に気づけたのも、一人でひねり出した答えではありません。

安心できる場と、そこへ導いてくれる人がいたからこそ、たどり着けたものでした。

 

※母の激烈な愛情に気づいたことに関して、もっと知りたい方は、こちらもどうぞ。

 

一人で頑張らなくても大丈夫

大切な人からの愛情は、いつも分かりやすい形で届くとは限りません。

気づかないまま、すれ違ったままになってしまうことも、少なくありません。

 

まずは、話してみるだけで構いません。

長い間、一人で抱えてきた。

それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。

「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。

 

私が提供している「ストレングス×パーツ統合アプローチ」では、あなたがまだ気づいていない、大切な人からの愛情や、自分の中にある願いに、そのまま耳を傾けながら、一緒にひも解いていきます。

 

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「もう少し読んでから考えたい」という方は、こちらもご覧ください。
 

※続きはこちら。両親が天国で幸せに暮らしていると実感することで、両親の死を穏やかに受け入れることができました。その後の自己探究のプロセスが気になる方へ。

 

※「ハコミセラピー」について、詳しく知りたい方へ。

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