ネガティブ感情は「お知らせ」|新人カウンセラー時代の体験から学んだこと
心理カウンセラーの仕事を始めたばかりの頃、小学生のクライエント(相談者)に拒否感を抱くことがありました。
「このままではいけない」と思い、気持ちを丁寧に確かめてみると、自分なりの解決策が見えてきたのです。
心理カウンセラーの体験から、ネガティブな感情の活かし方を学んだことについて、お伝えします。
クライエントに拒否感を抱いた新人時代

顔を見るだけでゾッとする。
小学生のクライエント(相談者)相手に、そう感じてしまう私がいました。
大学院を修了してすぐに採用された、教育相談センター(地域に在学・在住する子どもや保護者の相談を受ける公的機関)。
私は、相談員として、小学2年生の女の子、Aちゃんのプレイセラピーを担当していました。
Aちゃんは、不登校気味だったので、困った母親が、教育相談センターに来所したのです。
ベテランの相談員が母親の担当となり、新人の私はAちゃんの担当。
小さな子どもの場合、悩みなどを言葉で表現することが難しいので、遊びを使ってカウンセリングおこないます。
それが、プレイセラピーです。
Aちゃんは、週1回、来所するようになりました。
私を見かけると、「お姉さん!」と言って、嬉しそうに駆け寄ってきます。
一緒に、おままごと、かくれんぼ、トランポリン、粘土などで遊びました。
次第に、Aちゃんは、いわゆる、「終わり渋り」が激しくなっていきます。
面接の時間は50分と決まっているのですが、時間を告げても、遊びを続けようするのです。
数ヶ月が経つと、来所したAちゃんの姿を見るだけで、ゾッとする自分に気づくようになります。
正直、自分でも驚いてしまい、自分に何が起きているのか分からず、戸惑うばかりでした。
拒否感を丁寧に確かめ、見えてきたこと

拒否感を丁寧に確かめてみる
Aちゃんの顔を見るだけで、拒否感を抱いてしまう私がいる。
でも、Aちゃんに向き合う私でいたい。
困った私は、職場のベテラン相談員や、教育分析※1を受けていた精神分析療法家の先生に相談してみました。
ですが、私の個人的な問題だと言われて、おしまいに。
※1:教育分析とは、心理カウンセラー自身が心理療法を受け、自分自身を理解することで、他者を理解する力を高めるためにおこなわれます。
私個人の問題だと言われると、グーの音も出ません。
私自身、母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきたからです。
そこで、目を閉じて、自分に起きていることを、丁寧に確かめてみることにしました。
Aちゃんが「お姉さん!」と言いながら、私のほうに駆け寄ってくる。
私に抱きつき、「ねえ、いいでしょう」と言って、私のお腹の中にズボッと手を入れる。
私の内臓を1つ、ちぎって引きずり出し、「うふふ」と笑いながら、私の内臓にほおずりする。
ちぎった内臓を握りしめて、お母さんと一緒に、楽しそうに帰っていく。
(気持ちの悪い表現になっていますが、あくまでも、イメージ上の比喩です)
拒否感の根底にあるものが見えてきた
私は、ハッとしました。
原因は分からないけれど、Aちゃんは、愛情に飢え、生命の危機を感じているのかもしれない。
私から、愛情や生命力を得て、元気になろうとする力が、思いのほか、強い。
私は、Aちゃんから生命力を奪われるような怖れを感じて、拒否感を抱いたんだ。
それ以降、私は、イメージの中で、内臓を培養し、多めに増やしておくことにしました。
すると、Aちゃんと一緒にいても、穏やかな気持ちをキープできるようになったのです。
ネガティブな感情は「お知らせ」

ネガティブな感情は、正直、嫌なもの。
ですが、自分に何かが起きているという「お知らせ」でもある。
そのことを、私自身の体験から学びました。
感情を丁寧に確かめていけば、自分に起きていることに気づき、解決策が見えてくる場合があるのです。
感情を確かめる3つのステップ
ネガティブな感情を確かめ、活かしていく方法は、以下の通り。
①目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をしながら、特定の相手にネガティブな感情を抱いた場面を思い出す。
②ネガティブな感情が思い出されたら、どんなイメージであるかを、丁寧に確かめていく。
③思い浮かんだイメージをもとに、解決策を考える。
マインドフルネス※2の状態で、自分に起きていることに気づいていくプロセスとも言えます。
無意識に優しくアクセスすることができるため、意識にはのぼらないことにも、気づくことができるのです。
※2:マインドフルネスとは、目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をしながら、「今ここ」で起きていることに意識を向けていくことを言います。
一人で難しいときは専門家と一緒に
ただし、以下のような場合は一人で取り組むのが難しいこともあります。
- 感情が強すぎる。
- 身体感覚が先に出てしまう(悪寒など)。
- 幼いころに自分を傷つけた人と、相手が似ている。
- 「今ここ」に意識を向けることが苦手。
こうしたときは、信頼できる専門家と一緒に取り組むことで、安全に進められます。
信頼できる専門家を見つけて、ネガティブな感情を確かめてみましょう。
※ネガティブな感情を抱いた相手が、親など身近な人と同じ特徴をもっていた状況を扱ったことについては、こちら。
あなたが、ネガティブな感情に取り組むことに苦戦しているのであれば、私が提供している個別セッションがお役に立てるかもしれません。
よろしければ、ご活用ください。

ネガティブな感情は、自分を理解するためのチャンスでもあります。
無理のない範囲で感情を確かめ、解決策を見いだすことで、心が軽くなるかもしれません。
あなたも、誰かに拒否感やネガティブな感情を抱いた経験はありますか?
もし抵抗がなければ、その感情を丁寧に確かめてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






















