やめたいクセが教えてくれる心の守り方

自分でも「もうやめたい」と思っているのに、気づくと、つい繰り返してしまうクセ。

あなたにも、そんな行動はありませんか。

人前では恥ずかしいし、できればなくしたい。

それなのに、なぜかやめられない──。

実は、こうした「やめたいクセ」には、意志の弱さとはまったく別の理由があります。

心理学や心理療法の視点から見ると、それらの行動は、あなたの心を守るために身についた「大切な適応反応」なのです。

この記事では、心理カウンセラーである私自身の体験を交えながら、

  • なぜ、やめたいクセが必要だったのか
  • クセが担ってきた心理的な役割
  • 無理をせず、自然に手放していくためのヒント

についてお伝えします。

「やめられない自分」を責めるのではなく、理解する視点を持ち帰っていただけたら幸いです。

やめたいのに、やめられないのはなぜ?

「クセ」という言葉には、どこか否定的な響きがあります。

貧乏ゆすり、爪をかむ、髪の毛を抜く──。

人から見られると気まずく、

「そんなこと、やめたほうがいい」と言われがちな行動です。

ですが、心理的に見ると、

やめられない行動があるということは、そこに何らかのメリットが存在している

と考えられます。

「メリットなんて、あるはずがない」と思われるかもしれません。

しかしそのメリットは、

  • 安心感を得る
  • 緊張をやわらげる
  • 自分を奮い立たせる

といった、「心の安定を保つための働き」であることが多いのです。

私の「やめたいクセ」から見えてきたもの

長年抱えていた「やめたいクセ」

私には、長年続いていたクセがありました。

「頬の内側を歯で噛む」という行為です。

子どものころから、自然におこなっているクセ。

人目につきにくかったこともあって、気づけば、40年近く続いていました。

もちろん、良いことだとは思っていませんでした。

食事のときに痛みを感じることもあり、「できればやめたい」と何度も思ってきました。

それでも、なくならなかったのです。

マインドフルネスでクセを見つめてみる

心理療法を学ぶ中で、私はあるアプローチを試してみました。

それは、クセを「やめよう」とするのではなく、

「マインドフルネスの状態で、あえて丁寧に感じてみる」という方法です。

マインドフルネスの状態のまま、ゆっくりとクセを再現しながら、

  • どんな感覚があるのか
  • 体のどこに力が入るのか
  • どんな気分になるのか

を、ジャッジせずに、ただじっくりと観察していきました。

すると、これまで気づいていなかった感覚が立ち上がってきたのです。

※マインドフルネスについて、詳しくはこちら。

クセが伝えていた心のメッセージ

頬の内側を歯で噛むという行為の中には、

自分を内側から励まし、奮い立たせるような感覚がありました。

まるで、

「大丈夫」「負けるな」「間違っていない」

と、自分自身に声をかけているかのようでした。

このとき私は、はじめて理解しました。

このクセは、

「自分を責める行動ではなく、必死に支えるための行動だった」のだと。

幼少期の体験とのつながり

さらに振り返ってみると、思い当たる背景がありました。

私は、幼いころよりずっと、母から厳しく指導されることが多かったのです。

出来の良い弟と比較されながら、「できていない自分」を指摘され続けていました。

母なりの愛情であり、私を立派に育てたいという思いだったのだと思います。

けれど同時に、

心のどこかで傷つき、しょんぼりしている小さな自分がいたのでしょう。

その子を支えるために、無意識のうちに身についたのが、このクセだったのだと感じました。

やめたいクセは「心を守る工夫」

心理療法の現場では、

このような行動を「防衛反応」「自己調整行動」として捉えます。

不安や緊張、孤独感を抱えたとき。

人はそれを何とかやり過ごすための方法を見つけ出します。

それが、たまたま「クセ」と呼ばれる形だっただけなのです。

そう考えると、

やめたいクセは、

あなたが生き延びるために選び取ってきた、健気な工夫だと言えるでしょう。

無理にやめようとしなくていい

とはいえ、

体を傷つけてしまう可能性のある行動は、

いずれ手放していくことが望ましいのも事実です。

ただし、

クセだけを取り上げて無理にやめようとすると、別の形で現れる ことも少なくありません。

大切なのは、

その行動が担っていた役割を、

別の方法で満たしてあげることです。

安心感が育つと、クセは役割を終える

私自身は、ハコミセラピーのグループワークや個別セッションを通して、

  • 自分に優しい言葉をかける
  • 感情を否定せずに感じる
  • 内側の「子どもの部分」に安心を届ける

という体験を重ねてきました。

すると、

これまで必死に踏ん張っていた「大人の部分」が、
少しずつ力を抜けるようになっていったのです。

それに伴い、
頬の内側を噛むクセは、自然と姿を消していきました。

クセを通して、自分を理解する

もし今、

やめたいクセがあって困っているなら、

それを「敵」として扱うのではなく、

「どんな役割を果たしてきたのだろう?」

と、そっと問いかけてみてください。

そこには、

あなた自身を守ろうとしてきた切実な願いが、きっと隠れています。

心の奥にある傷や不安に向き合う作業は、

一人ではつらく感じることもあります。

そのようなときは、

専門家のサポートを借りることも、

自分を大切にする選択の一つです。

私は、個別セッションを通して、

あなたの行動の背景にある意味を一緒に探り、

安心感を育てていくお手伝いをしています。

あなたの中に「悪者」はいません。

すべての行動は、

これまでの人生を懸命に生き抜くためのものだったのです。

自分に優しく接することができたとき、

クセはその役割を終え、静かに手放されていくでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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