親と同じ過ちをくり返してしまう「世代間連鎖」を断ち切りたい

2026年7月12日

「親にされて嫌だったことを、自分の子どもにはしない」

そう心に決めていたのに、ふと気づくと、自分が親と同じことをしていた。

 

そんな経験はありませんか。

これは、意志が弱いからでも、親への愛情が足りないからでもありません。

 

親から子へと受け継がれる「世代間連鎖」には、断ち切ることが難しい、ある仕組みがあるのです。

 

この記事では、私自身が「母と同じことをしていた」と気づいた体験をもとに、世代間連鎖の仕組みと、断ち切るためのアプローチについてお伝えします。

 

「私は悪い子」―幼い頃に刻まれた思い込み

 

 

母は、私と弟を比べて、私を叱りつけることがよくありました。  

 

たとえば、私が朝寝坊すると、早起きした弟を引き合いに出して、私を叱ります。

まあ、どの家庭でもよくある光景かもしれませんが、私の母は言葉がキツイのです。  

 

ナオミみたいに、朝寝坊するぐうたらな子は、誰からも好かれない!

早起きできる○○(弟の名前)は結婚できても、ナオミと結婚するような人はいない!

ナオミは、みんなから嫌われて、孤独死するのよ!  

 

1歳下の弟。

弟は賢い子だったので、私が怒られる様子をよく見ており、母が嫌がるようなことは、決してしません。

 

幼い私は、母が弟だけを可愛がっても、それは当たり前だと思っていました。

弟に嫉妬のような負の感情を抱くこともありませんでした。

弟が良い子で、私が悪い子であることは、火を見るよりも明らかだったからです。  

 

ですが、私だけが叱られる状況は、悲しくて仕方ありません。

自分がダメな人間であることが、幼い私の心に刻印されていきました。  

 

私が、悪い子だから、ママに嫌われるんだ。

いつか、弟みたいな良い子になって、私もママに可愛がられたい。  

 

私なりに必死に努力しましたが、幼い私の切なる願いは、かなうことがありませんでした。  

 

母と同じことをしていた私

 

 

母にされて嫌だったことを息子にはしない。  

 

30代半ばで結婚し、息子が生まれてから。

私は、そう心に決め、かなり気を遣って、息子に接していました。  

 

幼い息子を感情的に怒ってしまったときは、冷静になってから謝る。

謝るときも、「お母さんは、仕事で嫌なことがあってイライラしていたから、必要以上に怒ってしまった」と、怒った理由を説明する。

そして、「仲直りしよう」と言って、幼い息子とハグをする。  

 

その一方で、夫の言動に、はらわたが煮えくり返り、夫への罵倒がとまらない。  

 

たしかに、私の夫は、とてもマイペースな人。

私が、仕事、家事、育児も一人でこなす、ワンオペの日々を送っていても、気づきもしない。

休日も楽しそうに、自分のペースで自分のやりたいことだけやって過ごしている。  

 

そんな夫を、私は「敵」と認識し、夫のささいな言動にイラっとするように。

そのうえ、「夫が悪いから、私が腹を立てるのは当たり前」と、自分を正当化していました。  

 

そんなこんなで、家では夫とケンカばかり。

生きること自体がつらくなり、わらをもつかむ思いで、様々な心理療法を体験し、自分を見つめる機会を重ねていくと――。

私は、母と同じことをしている自分に気づきました。  

 

母が弟を可愛がっていたように、一人息子は目に入れても痛くないほどの溺愛ぶり。

母が私をうとましく感じていたように、夫の言動にイラつき、夫を罵倒する。

「母と同じことはしたくない」と思っていたのに、母と同じことをしているなんて。  

 

私は、ひどくショックを受けました。  

 

なぜ「世代間連鎖」は起こるのか―仕組みを知ると、自分を責めなくなる

 

 

「世代間連鎖」に潜むもの

親から子へと引き継がれていく負の連鎖は、「世代間連鎖」と呼ばれています。  

 

人は誰でも、親など身近な人との関係の中で、他者との関わりをはじめ、様々な振る舞いを学んでいきます。

そのため、幼いころに、親と同じような言動を取るのは、ごく自然なこと。

ですが、ほとんどの人が、成長の過程で自分の言動を自覚し、改めていくので、「世代間連鎖」は起こりにくくなります。  

 

ところが、母から私へ、自覚されぬまま、引き継がれた行いがありました。

それが誤った行いであることには、全く意識が向きません。  

そこには、私自身の心のバランスを保つメリットが潜んでいたからです。

 

特定の人の前で良い人を演じ、「自分は良い人間。ダメな人間ではない」という感覚にひたる

私は、一人息子を可愛がることで、「良い母親としての自分」を確認し、安心を得ようとしていました。  

 

自分にとって安心・安全な相手に怒りをぶつけると、少しだけ気が晴れる。

私は、夫に対して行き場のない怒りぶつけることで、自分で自分を攻撃する苦しみを避けようとしていました。  

 

「世代間連鎖」が起きる仕組み

私自身の、そして、私の母の言動を振り返って、気づいたことがあります。  

 

不適切な養育を受けた子どもは、精神的に未熟な部分を残したまま、大人になる。

精神的に未熟な部分が活性化しているときは、自分がしていることに無自覚になりやすい。

そのため、親にされて嫌だったことを、気づかぬうちにくり返してしまう。

その負の連鎖が、世代を越えて受け継がれていく。  

 

けれども、「世代間連鎖」が起こるのは、あなたのせいではありません。

精神的に未熟な部分が残ったまま、大人になった。

それは、幼い頃の環境が、そうさせたのです。

だからこそ、「気をつければ、改めることができる」という問題ではなく、心の内側から働きかけることが必要になります。

 

「世代間連鎖」を断ち切るために―心の内側から働きかける

 

 

「インナーチャイルド」に働きかける

「世代間連鎖」を断ち切るために、私が見出したのは2つのことです。

自分のしていることを自覚する。

自分の内側にある、成熟した部分とのつながりを強める。

 

感情的になっているとき、心の中では「インナーチャイルド(自分の心の中にいる幼い子ども)」が暴走しています。

その状態では、自分の言動を客観的に見ることが難しく、「親にされて嫌だったことを繰り返している」と自覚できません。

 

とはいえ、ある程度の年齢になり、様々な経験を重ねていれば、「年齢相応に成熟した部分」も必ず育っているのです。

この部分とのつながりを強めることで、少しずつ、自分の言動を客観視できるようになっていきます。

 

具体的なアプローチとしては、「インナーチャイルドの言い分を聞き、共感する」という方向性が有効です。

年齢相応に成熟した「大人の部分」が、「子どもの部分(インナーチャイルド)」に関わっていきます。

ただし、これを自分一人でやろうとすると、「どの部分に働きかければいいのか」「何を伝えればいいのか」が分からず、堂々巡りになることが多いので、注意が必要です。

 

私自身も、心理療法の専門家との個別セッションを重ねることで、ようやく「自分が母と同じことをしている」という自覚が持てるようになりました。

安全な場で、専門家と一緒に探ることで、初めて見えてくるものがあるのです。

 

※自分の内側を複数のパーツとして捉える「心は集合体」という考え方について、理解を深めたい方へ。

 

※「インナーチャイルドに働きかける」具体的なアプローチについては、詳しく知りたい方へ。


「世代間連鎖」は、自覚するだけでは断ち切れない

「世代間連鎖」に気づいたとき、ひどくショックを受けます。

「なぜ自分はこんなことをしているのか」と自己嫌悪に陥ることもあるかもしれません。

 

でも、気づいただけでは、すぐには変わりません。

なぜなら、連鎖を生み出しているのは、頭の中の「考え」ではなく、心と身体に刻み込まれた「インナーチャイルド」の痛みだからです。

その痛みに、安全な場で丁寧に向き合うことで、少しずつ連鎖が緩んでいきます。

 

あなたの連鎖にも、断ち切れる可能性がある

まずは話してみるだけで構いません。

長い間、一人で抱えてきた。

それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。

 

「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。

 

私が提供している「ストレングス×パーツ統合アプローチ」では、世代間連鎖の背景にある「インナーチャイルド」の痛みに、マインドフルネスを用いたハコミセラピーのアプローチで、安全な場でそっと触れていきます。

また、あなた自身の「強み」を明確にすることで、「成熟した部分」の力を高め、自分の言動を客観視できるようになるプロセスも、一緒にサポートします。

 

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※自責の念の三重構造と、世代間連鎖の関係を深く理解したい方へ。

 

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