執着を手放すと心の境界が生まれる【私が自分を生きるまで㉗】
母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。
心軽やかな日々を手に入れたいと願い、自分を責めたり、否定したりする心の仕組みを、長年探究してきました。
そんな私が、「苦手なタイプ」に強い嫌悪感を抱いたという体験を機に、自己探究に励んだところ。
「根源にある執着を手放すと、心の境界線を引けるようになる」という気づきがありました。
今回は、その体験について、お伝えします。
嫌悪感が噴き出した瞬間

この人、無理!
オンラインの研修会に参加したとき、特定の相手に対して、強い嫌悪感が込み上げてきました。
あまりも強い反応に、「自分に何が起きているのだろう」と、戸惑うほどでした。
誰にでも、「この人、ちょっと苦手」と感じる相手はいるものです。
私の場合、
- 自分ができていることを誇らしげに語る人
- 自分の弱みを見せない人
- 他人の欠点に厳しい人
……そうしたタイプが特に苦手です。
これまでは、苦手な人と関わることがあっても、“相手に対する見方を変える方法”を使って、何とかやってきた。
でも、初めて会う人に対して、こんな強い嫌悪感を抱くということは、そろそろ根本的な対処が必要なのかもしれない。
そう感じた私は、「ハコミセラピー※」を用いて、自己探究を始めることにしました。
※「ハコミセラピー」とは、マインドフルネスを使って、無意識に優しくアクセスする心理療法。
※相手に対する見方を変える方法については、こちら。
嫌悪感の奥底にあったもの

嫌悪感の根源にいた「母」の存在
仲間と一緒に取り組んでいる、ハコミセラピーの練習セッション。
クライエント役の私は、まず、静かに呼吸を整え、「今この瞬間」に意識を向けるという「マインドフルネス」の状態になる。
そして、嫌悪感を抱いたときのことを思い出す。
すると、胸のあたりに、モヤモヤとした重たい感じが現れてきました。
その感覚に留まるように、意識を向けていくと。
私を頭ごなしに叱りつける、母の姿が浮かび上がってきたではありませんか。
母のイメージは、首のあたりに線が引かれ、上は明るく、下は暗い。
上の部分は、「立派で完璧な母」という表の顔。
下の部分は、怒り、恨み、ねたみ、悲しみ、怖さといった、封印しておきたい裏の顔。
その“見たくない部分”を、母は私に押しつけていたのです。
母が私を怒鳴りつけるのは、私が悪いからではない。
母が自分自身の受け入れがたい部分を、私に投影していたからだ。
無意識の中では分かっていたことが、意識にのぼってきた感じがしました。
幼い自分の悲しみと再生
イメージの中で、幼い私は、井戸の底に倒れていました。
母から、“見たくない部分”を押しつけられ、どろどろに汚れている。
しかも、深い井戸の底にたたきつけられた感じで、手や足、首があらぬ方向に曲がっている。
そして、小さな声で、つぶやいている。
ずるい。
私は悪くないのに。
全部、私のせいにされる。
薄暗い井戸の底に倒れている幼い私は、悲しんでいました。
怒りになる前の、深い深い悲しみ。
あまりにも悲しくて、涙がポロポロこぼれます。
セラピスト役の仲間が、幼い私の悲しみに寄り添ってくれると。
幼い私の身体が少しずつ癒されていき、井戸の底から出ることができました。
幼い私は、弱々しい感じから、一転、ちょっとたくましい感じになっています。
自分に言い聞かせるように、そして、周囲に宣言するように、言葉を発しました。
私は悪くない。
相手は相手、私は私。
私は私でやればいい。
同じ言葉を、セラピスト役の仲間にも言ってもらうと、腹の底から力がみなぎる感じになりました。
自分自身をしっかりと守り、母から押しつけられたものを、母に返すようなイメージも浮かびます。
私にとって、苦手なタイプの根源にいたのは、私の母。
そんな母との間に、しっかりと「心の境界線」が引かれた感覚がありました。
それは、長年の緊張がゆるみ、安心と静けさが広がる瞬間でもあったのです。
心の境界線を引くために必要なこと

執着を手放すことで境界線が生まれる
苦手な人に強い反応を示すとき、その背後には、「過去の大切な誰か」がひそんでいます。
たとえば、両親、祖父母、親戚の人、園や学校の先生、友だちなど。
私にとってのそれは、母でした。
幼いころに、身近な人から嫌なことをされ、傷つくと、その人のことを「危険人物」としてインプット!
危険人物の特徴と似たものをもつ人に対して、嫌悪感や拒否感を抱くのです。
危険人物を避け、心身の安全を保つための方策とも言えます。
これまでの私は、苦手な人に対して嫌悪感を抱くと同時に、相手に負の感情を抱く自分に罪悪感を覚えていました。
嫌な思いが込み上げると、「私が悪い」と考える習慣が身についていたとも言えます。
母への執着──「母に認められたい」「母のお気に入りでいたい」──が強かったため、心の境界線が曖昧になっていたのです。
心の境界線が上手に引けないために、苦手な相手に影響を受け、嫌悪感を抱くことをくり返していた私。
ですが、私の心の中にいる「幼い私」は、大人の私が自己探究を重ねた結果、たくましくなったのでしょう。
母との間に「心の境界線」を引く姿を見せてくれました。
嫌悪感など、ネガティブな感情を抱いてしまう相手との間に、「心の境界線」を引き、心穏やかに過ごすためには。
苦手なタイプの根源にある、特定の相手への執着を、手放す必要があるのです。
心の境界線を引くためのセルフワーク
私は今も、母との関係を起点とした感情が出てきたときには、次の言葉を心の中で唱えます。
私は悪くない。
相手は相手、私は私、
私は私でやっていく。
この言葉とともに、相手との間に、穏やかな光の境界線をイメージすると。
気持ちが侵食されるような感覚が、スーッと消えていき、心が落ち着いていきます。
対人関係におけるネガティブな感情は、避けるものではなく、自分を守るためのサインです。
自分に起きたことを丁寧に受けとめ、自分の思いを深掘りしてみましょう。
一人で難しいと感じたら

とはいえ、こうした自己探究を一人で行うのは簡単ではありません。
私自身も、セラピストとして信頼できる仲間がいたからこそ、自分の中にある深い悲しみや執着に気づくことができました。
苦手な人との関係に悩んでいるあなたも、その感情の根源には「過去の大切な誰か」がいるかもしれません。
一緒に心を見つめ、境界線を整えていきましょう。
人との関係で生じる嫌悪感や疲れは、過去の体験や心の執着とつながっています。
私が提供している個別セッションでは、その根源を優しく探りながら、心の境界線を自然に築けるようお手伝いしています。
「もう同じことで悩みたくない」「もっと楽に人と関わりたい」
そんなあなたへ。
まずは、お気軽にご相談ください。

苦手なタイプとの関係に悩んだときは、その奥に「過去に執着している誰か」がいないかを見つめてみましょう。
根源の執着を手放すことで、人との間に健やかな「心の境界線」が生まれ、あなたの心はより穏やかに、自由になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。























