発達凸凹が問題なのではなく、「期待の罠」にはまっているだけ
期待に応えたいと思っているのに、なぜか、相手をガッカリさせてしまう。
気づけば、相手の機嫌をうかがって、気を張りつめてばかり――。
そんな経験はありませんか。
「発達凸凹 ※1 」があると、思わぬところでミスをしたり、場違いなことをしてしまったりして、周りの期待から外れやすくなります。
特に、社会人になって、会社などで働くようになると、つらい思いをすることが増えます。
私自身、診断がつかない程度の軽微な発達凸凹を抱えているのですが――。
職場の先輩から「もっと細心の注意を」「もっと賢く判断して」と求められても、うまく応えられずに悩んだ時期があります。
その苦しさは、本当に、発達凸凹のせいだったのでしょうか。
今回は、発達凸凹のあなたが生きづらい本当の理由のひとつ、「期待の罠」についてお伝えします。
※1:「発達凸凹」とは、発達障害の診断はつかないまでも、生まれつき、得意なことと苦手なことの差が大きい状態を言います。「発達凸凹」について、詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
この記事は、生きづらさの原因を3つの視点から見つめる、「発達凸凹が問題なのではなく」シリーズの1つです。
期待の罠(今回の記事)
生きづらいのは、期待外れだから?

「期待に応えられない」自分が情けない
あなたには、判断能力がない。
今の仕事を辞めてほしい。
ある職場に勤めていた際、同じ業務を担当していた先輩から言われました。
職場内でトラブルが発生した際、私の言動が発端だと言われ、その先輩も責任を問われる立場になったからです。
採用された時期が一緒だったこともあり、最初は、とても親切にしてくれた先輩でした。
ところが、「専門職として、細心の注意をはらい、賢く判断してほしい」という先輩の期待にそぐわないことが重なるにつれ、先輩の私を見る目が変わっていったのです。
私なりにどんなに頑張っても、周りの「期待」に応えられないことがある。
思い返せば、幼いころから、「なんで、ナオミは、そういうことをするの!?」と、しょっちゅう母に怒られていた。
もしかして、私には発達凸凹があるんじゃないか――。
私が、自分の発達凸凹に初めて気づいた瞬間でした。
「期待」されても苦しくなるだけ
「常識」とのズレのほかに、発達凸凹のある私たちがはまってしまう別な「罠(トラップ)」があります。
それは、周りの人たちが、私たちに対して抱いている「期待」です。
親、親戚、近所の人、学校の先生、友だち、クラスメイト、職場の上司、職場の同僚、配偶者、子ども、などなど――。
私たちに関わるたくさんの人たちが、「あなたには、こうあってほしい」という「期待」を抱いています。
ところが、発達凸凹がある人は、相手が抱いている「期待」や、その場で「期待」されていることを察することが苦手。
また、「期待」を把握できたとしても、自分のしていることに注意が向くと、期待されていることが吹っ飛んでしまうこともよくあります。
そのため、「期待」にそぐわない行動を取ってしまうのです。
わざとやったのではないし、悪意はまったくない。
それなのに、相手が不機嫌になり、嫌な対応をされる。
傷つくし、悲しい。
幼いころから母の期待に応えられず、怒られてきた私は、次第に「私はダメな人間なんだ」と思うようになっていました。
そのせいでしょう。
先輩に職場を辞めるよう言われたときも、最初は、能力に欠けた自分を責め、転職先を探し始めました。
最終的には、周りのサポートもあり、その仕事を続けるにいたりましたが、「期待」にそえない自分を思うと苦しくなるのです。
人の数だけ、いろいろな種類の「期待」があります。
社会で暮らしていると、たくさんの人と関わることになるので、「期待の罠」にはまらずに過ごすのは、難しいかもしれません。
まったく期待されないのも悲しいのですが、期待されても苦しくなるだけなのです。
「期待」について、知っておいてほしいこと
「期待」にも大切な役割がある
発達凸凹のあなたが、日常生活を送っていてツライ思いをする理由のひとつは――。
周りの人たちが、あなたに対して抱いている「期待」です。
でも、相手に「期待」を抱くことは、「悪いこと」ではありません。
相手に「期待」を抱くことにも、メリットがあるのです。
たとえば。
- 「期待」というのは、自分が快適に過ごすために相手に守ってほしい基準。
- 「期待」を抱いている人が、「自分を大切にしている」ことの表れ。
- 場合によっては、「期待」を抱いている人が、あなたならやってくれるはずと「信頼している」ことの表れ。
あなたも、周りの人に対して、「こうしてくれるといいなあ」といった「期待」を抱いているのではないでしょうか。
それは、あなたが、あなた自身のことを大切に思っていて、自分を守ろうとしているからです。
あなたの周りにいる人たちも、同じ。
自分の環境を心地よいものにして、自分を守りたいと願っています。
そのため、この世から「期待」はなくならないのです。
「期待」は、言葉にしないと伝わらないことが多い
先ほどもお伝えしたように、発達凸凹のある人は、「相手の立場になる。第三者の視点で状況を把握する」といったことが、あまり得意ではありません。
それに、別のところに注意をとられていると、その場で期待されていることが、すっぽり抜けてしまうことがあるのです。
もし、「期待」から外れた言動をとってしまう人が身近にいたら――。
叱責して終わりにするのではなく、「ここでは、〇〇することが必要とされている」と教えてあげていただきたいです。
また、具体的にどうすればいいのか分からず、戸惑う発達凸凹さんもいます。
そんなときは、「具体的にしたほうが良いこと。行動のポイントなど」を、伝えてあげてください。
相手から「期待」されていることが分かりやすく提示されると、発達凸凹さんは安心して動きやすくなります。
「期待」の本質は、快適さの追求なのですから、どうせなら、気持ちよく過ごしたいものですよね。
なお、当事者(発達凸凹さん)からの尋ね方は、次の章の「工夫②」でご紹介します。
「期待の罠」から心を守るための3つの工夫
「期待」が、どの程度、あなたを縛るのかは、あなたがいる状況によって変わってくると思います。
でも、「期待の罠」は、いたる所にしかけられているのです。
それに、発達凸凹があるために、苦しい思いをしている人には、育ち方も影響しています。
幼いころから、期待外れの言動をすると、心が傷つくような対応を受けてきたのかもしれません。
「期待の罠」にはまり、期待に応えられない自分を責めるようになると、生きることが本当に苦しくなるのです。
だからこそ、発達凸凹のあるあなたには、自分の心を守ることを優先してほしいと考えています。
幼いころに守ってもらえなかった分、これからは、大人になったあなたが、あなたの心の味方になってあげてください。
私も実践している「期待の罠から、心を守るための3つの工夫」は、こちらです。
工夫①:「こころの距離」をとる
「期待の罠」が苦しみを生む背景には、「期待」の暴走があります。
まずは、他の人に「期待する側」の暴走。
相手が期待通りの行動をとってくれないと傷つき、怒りを覚え、相手につらくあたってしまうのです。
もちろん、相手のせいで被害をこうむるときに、イラッとするのは自然なことです。
でも、怒ることは、本当の意味での解決にはつながりません。
次に、相手から「期待される側」の暴走。
期待に応えることができないと、自分を責め、落ち込んでしまうのです。
場合によっては、傷つきが怒りに変わり、逆ギレ状態に陥るかもしれません。
期待する側、される側。
双方が暴走し合っている状態では、互いに嫌な思いをするだけ。
場合によっては、相乗効果のように、互いの不快感を強め合うことになるかもしれません。
「相手は相手、自分は自分」と考える
期待に応えられず、「自分が悪い」と思いがちな人は、自分を責める前に、相手と「こころの距離」を取りましょう。
「自分が悪いんだ」という考えが浮かんだら、次のような言葉を自分にかけてあげてください。
相手が不機嫌になっているのは、相手の気持ち。
私が「ダメな人間」だからではない。
相手は相手、私は私。
相手と自分の間に「こころの距離」がとれると、次第に気持ちがおさまっていきます。
気持ちが少し楽になってくると、冷静に考える余地も生まれてくるはずです。
※相手との間に「心の境界」を引けるようになった体験について、関心のある方は、こちらもどうぞ。
工夫②:相手に尋ねて解決策を探る
気持ちが少し落ち着いたところで、相手が「期待していること」を尋ねて、解決策を探ってみましょう。
ただし、期待している相手に直接尋ねたら、「そんなことも分からないのか!?」と怒り出しそうなときは――。
状況を把握している近しい人(友だち、職場の同僚など)に尋ねてみると良いです。
また、相手の怒りが激しい場合や、尋ねること自体が怖いと感じる場合は、無理に尋ねなくても大丈夫。
まずは、距離をとって自分を守ることを優先してください。
相手の期待を明らかにする質問
相手が「期待していること」を明らかにし、今後につなげたい場合には、次のように尋ねてみましょう。
結果を出すために、具体的にどのような行動を取れば良かったのでしょうか。
あるいは、これから、具体的にどのような行動を取っていけば良いでしょうか。
相手の期待が理不尽だと感じる場合の質問
相手の「期待」が理不尽だと感じられる場合には、このように聞いてみると良いかもしれません。
私が〇〇すること(期待に応えること)で、どんなメリットがありますか。
あるいは、私が〇〇しないこと(期待に応えないこと)で、どんなデメリットがありますか。
質問の前に置く「枕詞」
ただ、言いたいことをいきなり伝えてしまうと、相手を不快にさせることがあります。
そのため、相手に尋ねる前に、次のような「枕詞」をつけてみることがオススメです。
今回は、思ったような結果を出すことができず、申し訳ありませんでした。
今後、良い結果を出すために、ぜひ、教えていただきたいことがあります。
具体的な解決策を考える
そして、教えてもらった情報をもとに――。
自分にとって、相手の「期待」にそうことに、どんなメリットがあるのか。
メリットがあるなら、今後、具体的にどう行動していけばいいのか。
ということについて、考えていきます。
工夫③:周りの理解が得られるか、検討してみる
「期待」に応えたほうが、自分にとってはメリットがあると気づいても、具体的な解決策を実行することが難しい場合もあります。
たとえば、「状況を的確に把握し、臨機応変に対応してほしい」という期待が分かっても、発達凸凹がある人の中には、どうしても柔軟な対応に苦戦することがあります。
「期待」に応えるような行動をとることが難しいときは――。
「周りの理解や協力が得られるか」について検討してみましょう。
周りの理解や協力を得る
今いる環境において、苦手なことを周りの人たちに伝えたうえで、理解や協力が得られるかを探ってみましょう。
ただし、あなたの苦手だけではなく、強みを明らかにしておく必要があります。
苦手を避けることも大切ですが、あなたの強みを打ち出すことで、周りの理解や協力が得られやすくなるからです。
周りの人たちの理解や協力が得られるようであれば、たとえば――。
あなたの強みを活かせる部署に異動させてもらう。
同じ部署に留まるのであれば、苦手な業務を得意な人に任せる代わりに、強みを活かせる業務を一手に引き受ける。
といった方法も考えられます。
自分の強みを活かせる環境を探す
周りの協力や理解を得ることが難しいのであれば、あなたに合った環境を探してみてはいかがでしょうか。
つまり、あなたの強みを活かせる環境を探すのです。
たとえば、臨機応変に対応することが苦手でも、他の人なら飽きてしまうような同じ作業のくり返しが得意であるという強みがあるなら――。
そのあなたの強みを「売り」にすることで、新しい職場が見つけやすくなります。
※発達凸凹の人が自分の強みを活かす方法について、詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
これら3つの工夫は、「できることから少しずつ」で、大丈夫です。
とはいえ、3つの工夫を試してみても――。
相手の期待にそえない自分が情けないと思い、やる気がそがれてしまうことがあります。
人の「期待」に疲れてしまったあなたへ
相手の期待を先回りして察しようと気を張っているのに、なぜだか、期待にそうことができない。
その都度、「また、ガッカリさせてしまった」と、自分を責めてしまう。
そんなことを、くり返してきたのではないでしょうか。
まずは、話してみるだけで構いません。
相手の「期待」に応えようと、一人で頑張り続けてきた。
それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。
「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。
私が提供している「ストレングス×パーツ統合アプローチ」では、発達凸凹の知見も取り入れながら、「期待に応えなくちゃ」と気を張り続けている心の部分にも、一緒に向き合っていきます。
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「もう少し読んでから考えたい」という方は、こちらもご覧ください。
※相手をガッカリさせる恐れの根っこにあるものについて、もっと知りたい方へ。
※親や周りの「期待」に疲れてきた方へ。


























