自責の念がフラッシュバックなら、タッピングで消えることがある

2026年10月22日

何かに取り組もうとするたびに、「どうせ自分には無理」という声が、頭の中で鳴り響く。

どう頑張っても、なかなか消えない「自分を責める内なる声」に、疲れ果ててしまった。

そんな経験はありませんか。

 

その声が消えないのは、あなたの意志が弱いからではないかもしれません。

自責の念の中には、「フラッシュバック」の一種であるものが含まれている、と考える専門家もいるからです。

 

私自身、30年にわたって自責の念に取り組み、なかなかの手強さに、気長に付き合っていくしかないと腹をくくっていました。

ところが、「自分を責める内なる声」がフラッシュバックであると知り、簡単なタッピングを試したところ――。

私の場合は、声がぴたりと消えたのです。

 

今回は、私の体験をもとに、「手動処理」というタッピングの方法と、実践するときの注意点についてお伝えします。

 

「自分を責める内なる声」に苦しむ日々

 

私の頭の中では、しょっちゅう、自責の念が渦巻いていました。

 

何かに取り組もうとするとき。

思い通りに事が運ばなかったとき。

少しでも不安を感じる要素があれば、「自分を責める内なる声」が発動します。

 

いやはや、親しい友だちと一緒に過ごすときですら、心をくじくような、こんな声が響いてくるのです。

  • 私のような人間と一緒にいるだけで、友だちは不快な気持ちになる。
  • 相手は、徳の高い人間だから、私のようなダメ人間とつきあってくれているだけ。
  • 私のようなクズは、どんなに努力をしても、そのうち、本性を見抜かれて、嫌われる。

 

しかも、自分からは、どんなに頑張っても、離れることができない。

「自分を責める内なる声」は、どこまでもどこまでも、とことん私を追いかけてくる。

「自分を責める内なる声」がやむまで、私は、地獄の業火で焼かれるような苦しみを味わう。

 

あまりにも苦しいので、大学で心理学を学び、様々な心理療法を試し、自己探究を重ねてきました。

そのお陰で、生きることが随分と楽になっています。

ですが、「自分を責める内なる声」が消えてなくなることはありませんでした。

 

もはや、気長に付き合っていくしかない。

 

そう腹をくくった矢先――。

新たな事実を知ることとなりました。

 

※「自分を責める内なる声」に気長に付き合っていくしかないと腹をくくったことについて、もっと知りたい方は、こちらもどうぞ。

 

「自分を責める内なる声」はフラッシュバックだった

 

「認知・思考的フラッシュバック」とは

児童精神科医の杉山登志郎先生の著書(杉山、2021)を読んでいたとき、私はハッとしました。

「自分を責める内なる声」の正体は、「認知・思考的フラッシュバック」であり、「フラッシュバック」の一種だとか。

 

「フラッシュバック」とは、一般的に、心の傷になるような出来事を体験した人が、その出来事を思い出すような刺激に触れた途端、そのときと同じ感情や身体の感覚を感じたり、実際に当時の光景が見えたりすることを言います。

 

たとえば、戦場での激戦の末、かろうじて生き残った兵士の場合。

安全な自国で暮らすようになっても、何かがパンと弾ける音を聞いた途端――。

  • 戦場で銃撃戦があったときの光景がよみがえる。
  • 恐怖が全身をおおう。
  • 身体が硬直して、息が苦しくなる。

といった「フラッシュバック」が起こります。

 

ですが、子ども虐待の専門外来で、多くの子どもたちを診察し、治療してきた杉山先生(児童精神科医)は――。

従来考えられてきたより、「フラッシュバック」が広範囲にわたって現れることに気づいたそうです。

認知・思考的フラッシュバックとは、心理的虐待を受けて育った子どもが、成人した後も、何事かに取り組もうとすると、そのたびに、「どうせ自分はできない」「何をしても自分はダメな人間だ」という考えが浮かんでくる。これもまた、虐待者に押しつけられた思考の再体験である。

※杉山登志郎(2021)「テキストブック TSプロトコールー子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法ー」日本評論社より抜粋

 

フラッシュバックを軽減させる方法を試してみる

これって、私のことじゃない!?

杉山先生の著書を読んで、ピンとくるものがありました。

 

私の母は、私が幼いころから、自分の思い通りにならないと、私をなじり、罵倒するような言葉を投げかけてきたからです。

たしかに、私に対する母の関わりは、不適切だったと言えます。

とはいえ、母には、そうせざるを得ない事情や、苦しい思いがあったのでしょう。

 

それに、「自分を責める内なる声」は、どちらかと言えば、私自身の問題だと思っていたので、驚きもありました。

「私はダメ人間」という私自身の「ビリーフ(信じ込み)」が強いために、「自分を責める内なる声」が止まらないと考えていたからです。

 

まさか、「自分を責める内なる声」が、フラッシュバック(母の思考の再体験)だったとは。

そして、フラッシュバックが生じるぐらい、母の言動に心理的なダメージを受けていたとは。

 

ですが、自責の念が強い人すべてに、心理的なダメージを受けるような体験があるという意味ではありません。

背景は、人によって、さまざまです。

 

さて、新たな事実に衝撃を受け、目からウロコが落ちた私は――。

ものは試しと、著書に書かれていた「フラッシュバックを軽減させる治療法」のうち、簡単に取り組める「手動処理」を試してみました。

杉山先生が、「複雑性トラウマの治療」として発案した方法の1つです。

 

すると、その翌日。

仕事でささいなミスをしたのに、「自分を責める内なる声」がまったく出てこない!

 

なんと、フラッシュバックを軽減させる治療法の1つ、「手動処理」を試したら――。

認知・思考的フラッシュバック、つまり、自責の念が、ぴたりと消えたのです!!

 

「手動処理」の注意点とやり方

 

「手動処理」とは

杉山登志郎先生が発案した「フラッシュバックを軽減させる治療法」の1つが、「手動処理」。

身体のいくつかの部位をタッピングします。

 

フラッシュバックは、脳の過覚醒によって生じるので、タッピングによって、脳の神経回路を鎮静化させるようです。

ちなみに、「フラッシュバックを軽減させる治療法」は、主に医療機関で実施されます。

 

メインの治療法は、

①漢方薬を含む低用量の薬物処方

②パルサーという器具を用いて身体のいくつかの部位に交互刺激を与える治療(4~5回の通院が必要)

 

「手動処理」は、メインとなる治療を補助する役割を果たしているに過ぎません。

 

「手動処理」の注意点

先にもお伝えした通り、「手動処理」は、複雑性トラウマの治療法を補助する方法です。

杉山先生は、セルフケアを推奨していません。

気軽に治療を受けられない人もいるだろうからと、「フラッシュバックを軽減させる治療法」のやり方などを著書に記載しているに過ぎないそうです。

 

「手動処理」を実践する前に、次のことをお読みください。

  • 杉山先生は、「トラウマ処理に対してセルフケアをおこなうとなると、重症度が高い場合には危険が大きく、厳に避けねばならない」と書いている。
  • 人によっては、フラッシュバックが一時的に激しくなることもある。
  • 虐待体験による傷つきが大きい方や、日常生活が送りづらいほど苦しい方は、医療機関や専門家に相談しながら、取り組んでほしい。
  • すべての人に効果がある訳ではない。
  • つらさが強まったときは、すぐにやめる。

 

また、セルフケアを実施するときの注意事項などについては、杉山先生の著書で確認してください。

試してみるとしても、無理のない範囲でおこない、不安なときは、医師や専門家に相談することをおすすめします。

 

「手動処理」のやり方

①腹の部位(乳頭の線を下に降ろして肋骨の辺縁の部位)を両手で交互に20~30回ほど、パタパタと軽く叩く。

⇒胸郭呼吸(胸をふくらませ、肩を持ち上げるようにして呼吸する)で深呼吸。

 

②鎖骨の部位(鎖骨下部の腎のツボ)を交差した両手で、交互に20~30回ほど、パタパタと軽くたたく。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

③首の部位(頸動脈の部位)を両手で交互に20~30回ほど、パタパタと軽く叩く。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

④頭の部位(こめかみの部位)を交差した両手で、交互に15~20回ほど、優しくなでおろす。「自分はよくやっている。逆境にも関わらずやれてきた。これからもやっていける。よしよし、よく頑張っている」といった感じ。自分の頭をよしよしとなでているイメージでおこなう。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

「手動処理」の頻度

杉山先生は、診察の中で、必要に応じて「手動処理」の方法を教えているようです。

そのため、著書の中には、「手動処理」をセルフケアでおこなう場合の頻度について、詳細な記述はありませんでした。

せいぜい、「2週間のうちに、4~5回実施する」といった程度の記載のみ(杉山、2019)。

 

そこで、私の実践について、お伝えします。

 

①始めて2週間ほどの間:毎日1回(日によっては、一日に5~6回)

毎晩、寝る前に1回、おこなっていた。

しかし、「自分を責める内なる声」が再燃することを怖れて、やり過ぎてしまう日もあった。

 

②2週間が過ぎるころから:数日に1回

ちょっとモヤっとした不快な気持ちが生じたときに、「ボチボチやっとくか~」という感じで。

「自分を責める内なる声」が現れることはなかった。

 

③1ヶ月が過ぎたころ:毎日1回

仕事で大きなミスをする、私を嫌っている人と顔を合わせる、といった状況が生じたことで――。

「自分を責める内なる声」が、じわ~っと再燃してきた。

「手動処理」をおこなうと鎮まるので、状況が落ち着くまで、頻度を増やした。

 

④3~4ヶ月が過ぎてから:必要なときだけ

状況が落ち着くと、「自分を責める内なる声」がなくなった。

「自分を責める内なる声」が大きくなったときにだけ、「手動処理」をおこなった。

 

3~4ヶ月ぐらいの間は、定期的におこない、それ以降は、必要なときだけ、おこなえば済むようになりました。

とはいえ、あくまで私の場合です。

ご自身の状態に合わせて、無理のない範囲でおこなってください。

 

「手動処理」の効果に関わること

 

傷つきが大きい人は、専門家と一緒に取り組む

「杉山先生の「トラウマ治療」に関するワークショップ(2024) ※1 を受講したとき。

「TS(トラウマティック・ストレス)プロトコール」、つまり、「フラッシュバックを軽減させる治療法」で改善しなかった人は――。

「途中でやめてしまった人」と、杉山先生がおっしゃっていました。

 

※1:金剛出版主催ワークショップ「誰でもできるトラウマ臨床」 講師:杉山登志郎先生(2024)

 

杉山先生によると、性的虐待を含めた、壮絶な虐待体験がある人は、深い人間不信を抱えていることが多いそうです。

そのため、定期的に医療機関に通院することが難しい。

「TSプロトコール」の治療が全て終わらないうちに、通院しなくなってしまう、とのことでした。

 

また、「TSプロトコール」のメインの治療(パルサーによる刺激)をおこなうと、初めの1~2回は、フラッシュバックが強まる副作用が出る。

そのため、続けることが恐ろしくなるという要素もあるそうです。

 

虐待体験による傷つきが大きい人は、「手動処理」をはじめとする治療に取り組むのが難しい。

場合によっては、副作用が大きく現れ、恐ろしい思いをするかもしれない。

 

そんな印象を受けました。

そのため、傷つきが大きい人には、危険なことがあるかもしれません。

「手動処理」をおこなう際には、専門家と一緒に取り組むことをおすすめします。

 

自分の現在の状態が影響する

私と似たような境遇にある人でも、「手動処理」の効果が得られないのは、どうしてか。

疑問を覚えた私は、「手動処理」を試した、周りの人たちの感想や、自分自身を深掘りしながら――。

かなり自分勝手な考えではありますが、次のような結論にいたりました。

 

「手動処理」によって、フラッシュバックがなくならない人は、以下のいずれかの条件を備えているのではないか。

  • 他者からケアしてもらう体験に乏しく、セルフケアより、誰かにケアしてもらいたいと感じている。
  • 厳しい言葉を投げかけてきた親と、何らかの事情で、心理的な距離を取ることが難しい。

 

私の場合は、「母に愛されたい」と願ってやまない時期に、「一瞬で悩みを消す方法」を試したら、具合が悪くなったことがあります。

その方法は、自責の念や自己否定の思いを手放すというものでした。

当時の私は、母から押しつけられた思考でさえ、母から授かったギフトのように感じられ、手放せなかったのでしょう。

 

ところが、自己探究を重ねるうちに、母に愛されなくてもしぶとく生きている私自身に気づきました。

そして、誰かにケアしてもらいたいという気持ちが薄くなっていったのです。

そんなタイミングで、「手動処理」を試したので、フラッシュバックがなくなったのだと思われます。

 

効果が出ないのは、あなたの努力や、心の持ち方のせいではありません。

まだ、そのタイミングが、来ていないだけかもしれません。

 

フラッシュバックではない自責の念には、効果が出ないことがある

「手動処理」で自責の念が消え、ホクホクしていた私でしたが――。

半年も経つと、自責の念がむくむくとわき出てきました。

 

そこで、「手動処理」をおこなったのですが、自責の念が消えません。

素晴らしいと思っていた方法が通用せず、かなり打ちのめされました。

 

ですが、「手動処理」では消えない自責の念の正体を見極めるために、専門家の力も借りて、さらなる自己探究に励んだところ――。

その正体は、「幼児的万能感の成れの果て」であったことが明らかになりました。

 

自責の念は、人によっては、一種類だけでないのです。

フラッシュバックではない自責の念は、タッピングでは消えません。

 

※認知・思考的フラッシュバック以外にも、自責の念となるものについて、もっと知りたい方は、こちらもどうぞ。

 

「手動処理」は、すべての自責の念に効果があるとは言えません。

ですが、フラッシュバックである自責の念は、消えていくことがあります。

 

また、トラウマは、身体に記憶されるとも言われています。

そのため、身体からのアプローチが有効なことがあるのです。

自分の状態と相談しながら、できることから1つずつ、試してみてくださいね。

 

とはいえ、セルフケアだけでは、手に負えない自責の念もあります。

ご自身の状態によっては、医療機関や、専門家と一緒に取り組むほうが、安全で、確実なこともあります。

 

自責の念と、一人で付き合い続けてきたあなたへ

どう取り組んでも消えない、自分を責める声。

それと、何年も、一人で付き合い続けてきたのではないでしょうか。

 

まずは、話してみるだけで構いません。

消えない声を抱えながら、それでも、毎日を過ごしてきた。

それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。

「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。

 

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「もう少し読んでから考えたい」という方は、こちらもご覧ください。

 

※フラッシュバック以外の背景も含めて、自責の念を構造から理解したい方へ。

 

※自責の念に対する身体を使った別のアプローチに、関心のある方へ。

 

【参考文献】

TSプロトコールの背景について、詳しく知りたい方の参考になる文献です。

  • 杉山登志郎(2019)「発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療」誠信書房
  • 杉山登志郎(2021)「テキストブック TSプロトコールー子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法ー」日本評論社

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