心の栄養を自給自足する「ラビング・プレゼンス」実践記|心が動かないときの、自分自身を対象にしたやり方
心がしんどいのに、気持ちがまったく動かない。
「どうにかしたい」と思っても、何も感じられない。
自分を支える力が、わいてこない。
そんな経験はありませんか。
それは、あなたが悪いのではありません。
心が、あなたを守ろうとして、感じる働きをいったん止めているのかもしれません。
私自身、職場で厳しい状況が続いたとき、気持ちがまったく動かなくなる時期がありました。
そんなとき、自分の内側から心の栄養を生み出す方法を見つけたのです。
今回は、自分自身を対象にした「ラビング・プレゼンス」のやり方と、私がこの方法で心を支えた体験について、お伝えします。
否定の言葉を受けて育った私が、心を守るためにしてきたこと

私は、母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきました。
そのため、大人になってからでも、自分にとって厳しい状況が起きると、心が一気に凍りつくような感覚に襲われることがあります。
心の中に「緊急事態宣言」が発令される
「ハコミセラピー ※1 」をともに学ぶ仲間と、セッション練習をしていたとき。
私は、職場で起きている厳しい状況を、テーマとして取り上げました。
私一人では、手に負えないようなトラブルが発生し、職場の人たちの協力を得てはいるものの、のっぴきならない状況。
深呼吸をしながら、「今この瞬間」に意識を向けると、思考が静まり、無意識に押し込めていた感覚や感情が浮かび上がってきます。
こうしたマインドフルネスの状態のまま、自分の内側に意識を向けていくと――。
上半身に「重たい肉のカタマリ」のような感覚が、ど~んと現れました。
胸のあたりが苦しく、息がしづらいほどです。
しかし、驚いたことに、「怖い」「不安」などの感情は、いっさい浮かんできません。
ただ、感情が押しつぶされ、その残骸のような黒いカスが散らばっているイメージだけが見えています。
そして、その重たいカタマリから、言葉のようなものが感じられました。
「今は緊急事態宣言が発令されているので、この態勢を解除できません」という言葉でした。
私の心は、現状を「緊急事態」として受けとめ、その場を生き延びるために、感情を抑え、自分の身を守ろうとしていたのです。
※1:「ハコミセラピー」とは、マインドフルネスを使って、心と身体の両方に働きかける心理療法です。
※ハコミセラピーについて、詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
自分に優しくしても届かないとき

心が「緊急事態モード」に入ってしまうと、セルフケアが効きにくくなることがあります。
私は「自己流セルフ・コンパッション」を日課にしており、自分に優しい言葉をかけているのですが、このときばかりは、効果が感じられませんでした。
私の心が、防御の態勢をとっているかのように、固く閉じていて、言葉が入り込む余地がない感じだったのです。
※セルフ・コンパッションが届かない理由を知りたい方は、こちらもどうぞ。
そんなとき、ふとアイデアが浮かびました。
自分自身を対象に「ラビング・プレゼンス」をしたらどうだろう?
「ラビング・プレゼンス」とは、「目の前の相手の存在から、愛(心の栄養)を受け取り、味わうワーク」です。
通常は、他者やモノを対象におこないますが、「自分自身から愛を受け取る」という発想は、初めてのもの。
もし、自分を対象にしたら――。
心の栄養がじわじわ染みこんでいって、「自給自足」できるのではないか。
そんな期待が、芽生えました。
自分自身に対する「ラビング・プレゼンス」のやり方
早速、自分自身を対象に、ラビング・プレゼンスをおこなってみました。
手順は、シンプルです。
なお、ラビング・プレゼンスに慣れていない方は、気持ちが沈んでいないときに、「モノ」から始めることをおすすめします。
詳しくは、この後の「うまくいかないときのコツ」をご覧ください。
ステップ①:おこなう対象を決める
今回は、鏡に映る私自身。
ステップ②:マインドフルネスの状態になる
目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をしながら、「今この瞬間」に起きていることに意識を向けていきます。
ステップ③:自分に言葉をかける
心の中で、次の言葉を唱えます。
このあと目を開けると、今の自分にとって必要な何かが流れ込んでくる。
私は、それを受け取り、いい感じを味わうことができる。
そして、少しワクワクしながら、その瞬間を待ちます。
ステップ④:一瞬、目を開いて「鏡に映った自分」を見て、目を閉じる
鏡の中の自分を、ほんの一瞬、チラッと見て、すぐに目を閉じます。
ステップ⑤:ここちよい感じを味わう
目を閉じたら、内側から「ここちよい感じ」がわき上がってくるのを待ちます。
自分の中で起きている感じを、ただただ丁寧に味わいます。
何も感じないときは、もう一度、目を開けて、チラッと見て、閉じることをくり返しても大丈夫です。
何も感じなくても、あなたのやり方が間違っているわけではありません。
自分に対するラビング・プレゼンスを試してみて、私が受け取ったのは、「凛とした強さ」という感覚でした。
通常の「自分の顔を鏡で見るとき」とは、まったく違った感触のもの。
そこには、まっすぐ立つ竹のような、太くしなやかなイメージがありました。
強風でも折れず、地震でも倒れない、しなやかな強さ。
タケノコや竹材、竹炭として、人の役に立つことの誇らしさ。
そのイメージを味わっていると、胸の中の「緊急事態」の重さが、じんわりと溶けていくのを感じました。
しかも、自分から発生したポジティブな感覚を味わうので、自然と自己肯定感も上がるような嬉しさも加わりました。
私の場合は、無意識から浮かぶイメージのほうが、頭で考えた優しい言葉よりも、固く閉ざした心に届きやすかったようです。
うまくいかないときのコツ
自分を対象にやってみたけれど、うまくいかない――。
そんな声もあると思います。
自分を責めたり、否定したりする習慣がある人ほど、最初から自分で自分を満たすのは難しいことがあります。
私も、昔はそうでした。
ですから、うまくいかない方には、「段階的ラビング・プレゼンス」をおすすめしています。
段階①:モノに対して
ペット、植物、好きな雑貨、食べ物、など。
あなたが「好き」「いい感じ」と感じられる対象から始めましょう。
※「モノ」を対象にした「ラビング・プレゼンス」について、詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
段階②:知らない人に対して
初対面の人、街で見かけた人など。
日常で接点がない相手のほうが、取り組みやすいです。
※「ラビング・プレゼンス」の基本の手順と、取り組むときの注意点を知りたい方は、こちらもどうぞ。
段階③:身近な人に対して
家族、同僚などへ。
感情的な葛藤が出やすいので、慣れて、余裕があるときに試します。
新しい発見があるかもしれません。
段階④:自分自身に対して
鏡や写真を使うと取り組みやすくなります。
つらくなったときは、前の段階に戻って、大丈夫です。
段階を踏んで「心の栄養を受け取る経験」を積むうちに、心の器が育っていくのが感じられるかもしれません。
実際に試してみる際には、無理のない範囲でおこない、不安なときは、医師や専門家に相談することをおすすめします。
心の栄養を自給自足して、生き延びる力に変えていく

私は、職場での厳しい状況が続く中で――。
この「自分自身へのラビング・プレゼンス」に助けられています。
心が緊急事態のときほど、外からの言葉は届きにくくなることがある。
そんなときでも、
自分の内側から湧き出る「いい感じ」を受け取ることはできる。
それは確かに、心の栄養の「自給自足」でした。
あなたも、試してみてくださいね。
ほんの数分、やってみるだけでも、心がふっとゆるむのを感じるかもしれません。
とはいえ、セルフケアだけでは、手に負えない苦しさもあります。
ご自身の状態によっては、医療機関や、専門家と一緒に取り組むほうが、安全で、確実かもしれません。
心が動かなくなるほど、頑張り続けてきたあなたへ
しんどいのに、助けを求める余裕もない。
誰かに話そうとしても、何を話せばいいのか分からない。
それは、あなたの心が、これ以上傷つかないよう、必死に身を守っているからかもしれません。
まずは、話してみるだけで構いません。
厳しい状況の中で、自分を支えようと、ずっと踏ん張ってきた。
それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。
「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。
私が提供している「ストレングス×パーツ統合アプローチ」では、緊急事態モードで感情を抑えている心の部分(パーツ)にも、あなたの安心できるペースで、一緒に向き合っていきます。
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「もう少し読んでから考えたい」という方は、こちらもご覧ください。
※セルフ・コンパッションを1年続けた体験について、知りたい方へ。
※疲れているときにも取り組める、低出力の対処法を知りたい方へ。
【参考文献】
「ラビング・プレゼンス」について、理解を深めたい方は、ご参照ください。
- 高野雅司(2013)人間関係は自分を大事にする。から始めよう 青春出版社
- 高野雅司(2018)図解「人づきあいが面倒!」なときのマインドフルネス 青春出版社

























