壊れた母を守りたかった幼い私【私が自分を生きるまで⑫】
母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。
生きづらさを解消し、「自分を生きる」ために、自己探究を重ねていきます。
その過程の中で、自分を「否定する部分(パーツ)」が揺らぎ、「そのままの私でも、母から愛される」という、新しい体験を得ることができました。
そして、自分がほしいものを手にする力を取り戻したためか、心の中にいる「幼い私」が抱いていた、別の願いにも気づいたのです。
今回は、自己探究の中で見えてきた、「壊れた母を守りたい」という、幼い私が抱いていた別の願いについて、お伝えします。
万物を否定するような声が聞こえてくる

心が震えるような素晴らしい体験をしたのに
2019年の3月。
私は、「ハコミセラピー」※1 のスペシャル・ワークショップに参加しました。
※1:「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかける心理療法です。
そこで、あるワークに取り組んだ際、「そのままの私でも、母から愛される」という体験をした私。
それは、私の心の中にいる「幼い子ども」が願ってやまない体験でした。
私の母は、つらい生い立ちに加え、結婚してからも嫁姑問題で苦労してきた人。
そのため、幼い私を育てる際、心のゆとりがなかったのでしょう。
どうしても、幼い私を厳しく叱ることが多くなり、褒めることはありませんでした。
ワークを終えてしばらくは、得難い体験に心が震え、感動に包まれるような状態となりました。
※この体験について、詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
体験も講師も否定する考えが浮かぶ
ところが、1時間も経つと――。
新しい体験を否定する考えが、わきあがってきたのです。
しかも、私に呪いをかけてくるような声として聞こえてきます。
今の体験は、嘘っぱち。
たまたま、気分が盛り上がっただけ。
根も葉もないところから、架空の物語が出てきたに過ぎない。
混乱した私は、とりあえず、参加者全員の前で、自分に起きていることを伝えてみました。
私は、先ほどのワークで、「母から愛されてもいい存在だ」という体験をした。
でも、その後、「私が体験したことは、嘘っぱち」という考えが浮かんできた。
とても混乱している。
すると、ワークショップの講師をしていた、ジョージア・マービンさんが、コメントをくれました。
彼女は、カナダから来日した、ハコミセラピーのシニアトレーナーです。
しっかり現実を見なさい。
あなたの体験は、周囲の人たちも見ていた本物(リアル)。
嘘っぱちの要素はない。
ですが、ジョージアさんのコメントを聞くと――。
今度は、ジョージアさんを否定し、私をけなす言葉が、ものすごい勢いでわいてきたのです。
ジョージアさんは、他の参加者には優しい言葉をかけるのに、私には厳しい言葉。
ダメな人間は、みんなから嫌われて当然。
私は、ジョージアさんに嫌われている。
嫌われ者には、ムチしか飛んでこない。
呪いの言葉が頭の中をかけめぐり――。
「そのままの私でも、母から愛される」という天にも昇るような体験が、あっという間に、台無しになってしまいました。
壊れた母を守るために闘っていた幼い私
母との関係が構図として再現される
スペシャル・ワークショップの数日後。
私は、ジョージア・マービンさんによる「公開個人セッション」を受けました。
「公開個人セッション」では、参加者全員が見守る前で、個人セッションのクライエント(相談者)になることができるのです。
私の順番が来ました。
緊張しながらも、母との関係に縛られている自分について話します。
ジョージアさんは、「何があると安心しますか」と私に尋ねてきました。
私が答えると、ジョージアさんは、ほかの参加者をうまく配置して、私の心の中を再現していきます。
最終的に出来上がった構図は、
恐ろしい魔物におびえる、少女のような私の母。
母の隣には、勇ましい姿の女戦士。
女戦士は、鉄の鎧で身を固め、大きな刀を振り回して、魔物を切り裂いていく。
ふと、「おびえる弱々しい母を守りたい」という思いが、私の中にあるのだということに気づきました。
母の苦しみの本質が見えてくる
そして、自分の心の中で起きていることに注意を向けていくと、私のイメージは鮮明になっていきます。
魔物は、母の不安や怖れ。
母の口の中から、魔物が無限にわいてくる。
女戦士は、母を守るために、不眠不休で、魔物と闘わなければならない。
母が安心を感じることはなく、この闘いに、終わりはない。
疲弊し、傷だらけになっていく女戦士。
私の母は、現実社会では、気丈だし、とても賢い人です。
家事でも、仕事でも、やるべきことをしっかりこなしていました。
ですが、私の中で展開するイメージを眺めているうちに、気づいたことがあります。
母の心は、どこかで壊れてしまっていたのだ。
自らが生み出す不安を怖れにからめとられている。
自分で自分の首を絞めるように、苦しみを深めている。
母の苦しみの本質を見た気がしました。
幼い私の願いは不毛のままに終わる
そのまま、自分の中で起きているイメージをじっと眺めていると、さらなる気づきが広がっていきます。
母は、行き場のない不安や怖れを、私にぶつけていた。
私は、母が好きだったから、母を助けたかった。
頑張って母を助けることで、母を笑顔にしたかった。
だから、あの女戦士にみたいに、母を守りたかった。
歴戦の強者といった感じの女戦士でさえ、苦労している魔物退治。
幼い私に、すべての魔物を退治し、母を守る力なんて、あるはずがありません。
それなのに、幼い私は、
壊れた母を笑顔にするために、終わりのない闘いに足を踏み入れてしまった。
ある意味、母に取り込まれてしまっていた。
そのため、必死になって、不毛なおこないを続けてきた。
母から精神的に距離を取ることが難しく、自分らしく生きることに苦戦していた。
そのことに、初めて気づきました。
壊れた母から距離をとる
イメージの中の母が金切り声をあげる
「公開個人セッション」が終わった直後から――。
少女の姿をした母が、魔物のような形相になって、金切り声をあげるイメージが浮かぶようになりました。
さっきのセッションは、いい加減で、嘘っぱち!
あんたは、あの女(ジョージアさん)に、だまされてる。
ほかの人(私以外に公開個人セッションを受けた人たち)とは、ハグしたり、温かく微笑んだり。
それなのに、あんたとは、あっさりしたもの。
周りに人を配置したら、それでおしまいって、どうなの!
適当におこなわれたセッションなんて、何の意味もない!
私は、必死に反論します。
ジョージアさんは、プロフェッショナル。
だから、私に嫌な感情を抱いたとしても、最善のセラピーをするはず。
そう反論すると、少女の姿をした母は、ムンクの叫びみたいな形相に変貌。
私に対して、罵詈雑言を浴びせてきます。
あんたは、ママの言うことを信じないの!
あんな嘘っぱちセラピストのほうを信じるなんて。
だから、あんたは、バカで、何をやってもダメなのよ!
私が幼いころ、母はこんな口ぶりで、私を罵倒していたんだ、ということが――。
記憶にはないものの、体感として感じられます。
母から距離を取るイメージを作っていく
このまま、母に追いつめられたら、私も壊れてしまう。
そんな風に、冷静に考える私もいました。
そこで、「ジョージアさんは、プロフェッショナル!!」と、何度も心に刻むようにつぶやきながら――。
母を守り、自分の心を守るためのイメージを展開することにしました。
イメージの中で、「魔物に襲われる!」と絶叫する母。
襲いかかってくる魔物を大きな刀で斬り倒す、甲冑姿の女戦士。
私は、「女戦士さん、母を守ってください」と祈りをこめる。
そして、母と女戦士、私との間に、カーテンを引く。
次々とカーテンを引き、母と女戦士が、異次元に移っていく。
何重にもカーテンを引くうちに――。
母と女戦士の姿は、遠のいていき、ついに見えなくなりました。
私の心の中に、静かで、穏やかな感じが現れます。
私と母の関係性が見えてくる
ジョージアさんとの「公開個人セッション」で、私と母の本当の関係性が見えてきました。
さまざまなストレスで、心が壊れてしまった母は、どこかで私に依存していた。
私も、母には笑顔でいてほしいと願っており、そのためには母の要求に応えなければいけないと感じていた。
母の存在が、私の中に深く根づいているからこそ、私は私らしく生きることができず、母とほど良い距離をとることも難しい。
でも、母と私との関係性に気づいてから――。
母との間に、ほんの少しではありますが、心の距離が取れるようになりました。
そして、これまた、ちょっとだけ、心が軽やかになったのです。
この気づきは、一人で頭を整理して得られたものではありません。
「公開個人セッション」という、安心できる場で、セラピストであるジョージアさんやほかの参加者たちに付き添ってもらいながら見えてきたものでした。
一人で頑張らなくても大丈夫
壊れてしまった母を守りたかった、幼い私。
その願いに気づき、母との間に少しだけ距離を取れるようになるまでには、安心できる場と、隣で支えてくれる人が必要でした。
まずは、話してみるだけで構いません。
長い間、一人で抱えてきた。
それだけで、十分すぎるくらい頑張ってきたということです。
「もう少し、楽になってもいいかもしれない」と感じたなら、その気持ちを最初の一歩にしてください。
私が提供している「ストレングス×パーツ統合アプローチ」では、あなたの中にある「誰かを守りたい」という部分(パーツ)の願いにも、そのまま耳を傾けながら、一緒にひも解いていきます。
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※続きはこちら。母が私をけなす言葉を遺して亡くなり、深い悲しみを抱えることになりました。その後の自己探究のプロセスが気になる方へ。
※「ハコミセラピー」について、詳しく知りたい方へ。
























