ツライ思いを溶かす「ハコミセラピー」の魅力 ノンバイオレンス
生きづらさを何とかしたくて、悪戦苦闘するうちに、自己探究オタクとなった私。
長年にわたって、さまざまな心理療法を試してきたにも関わらず、生きづらさが残っていました。
ところが、「ハコミセラピー」に出合ってから、生きやすくなってきたのです。
今回は、苦しい思いを抱えて、もがいていた私を救ってくれた、「ハコミセラピー」の魅力についてお伝えします。
「ハコミセラピー」とは?
「ハコミセラピー」は、1980年前後、アメリカのセラピストである「ロン・クルツ博士」が作り出した心理療法です。
東洋と西洋の英知を統合させたもので、心と身体の両方に働きかけます。
今、ちまたで流行っている「マインドフルネス(瞑想状態)」を、最初に取り入れた心理療法でもあります。
「ハコミセラピー」には、ざっと、次のようなものが混ぜ込まれています。
- 仏教
- タオイズム(老荘思想、道教)
- さまざまな種類のカウンセリング理論
- ヒプノセラピー(催眠療法)
- ボディワーク(身体への働きかけ)
そして、「ハコミ」という謎の言葉。
これは、アメリカ先住民、ホピ・インディアンの言葉で、「あなたは何者か」という意味です。
新しく作り出したセラピーに、名前をつけたいと考えていた、ロン・クルツ博士。
勉強会をおこなっていたとき、メンバーのひとりが、「ハコミ」という言葉を口にしたのを聞いて。
ロン・クルツ博士は、「それだ!!」とひらめいたんですって。
「ハコミセラピー」とは。
自分自身が何者であるかを見いだすセラピー。
このセラピーの本質をズバリと表現している、絶妙なネーミングです。
心理療法は「ノンバイオレンス」?
心理療法の世界にもある「バイオレンス」
心理療法の世界にも「バイオレンス(暴力)」がある。
そんな風に言われたら、ビックリしちゃいますよね。
一般社会だったら、様々な名称のハラスメントがあり、「バイオレンス」が横行していると分かるけど。
悩みがある人が訪れる場所で「バイオレンス」だなんて、あり得ないって。
実は、自己探究オタクの私。
生きづらさを何とかしたくて、様々な心理療法にチャレンジしてきたのですが、その中で傷つく体験をしています。
- 両親の束縛から解放されるワークを行ったが、嫌な感じが残る。
- 幼いころからの信じ込み(ビリーフ)を手放す方法を実践したら、具合が悪くなり、自己嫌悪に陥る。
- 心理カウンセラーから、はれものにさわるような扱いを受け、悲しくなる。
- 心理カウンセラーが何の意見も言ってくれず、手ごたえがなくてガッカリする。
私の場合、傷つく体験をしても、「私がダメな人間だから、こうなってしまった」と自分を責めて、おしまい。
「バイオレンス」について考えたことなど、ありませんでした。
しかし、心理カウンセラー(心理セラピスト)が、クライエント(相談者)のために、良かれと思ってしていることだとしても。
心理カウンセラーからの提案や態度に苦しさを感じるクライエントにとっては、「バイオレンス」。
心理カウンセラーから何もしてもらえないと感じるクライエントにとっては、「放置」という意味で、「バイオレンス」。
暴力や暴言など、分かりやすい形での「バイオレンス」ではないとしても、心理療法の世界にも「バイオレンス」があるのです。
「ハコミセラピー」は「ノンバイオレンス」
自己探究オタクの私は、さまざまな心理療法を体験して、気づきました。
「ハコミセラピー」だけは、本当に「ノンバイオレンス」で満たされている!
「ノンバイオレンス」の意味は、「非暴力」、つまり、「人の心を脅かさない」ということ。
「ハコミセラピー」が「ノンバイオレンス」を実践できる理由について、考えてみました。
「ノンバイオレンス」の背景にある「タオイズム」
「ハコミセラピー」の理論的背景の1つにあるのが、「タオイズム(老荘思想。道教)」。
この「タオイズム」が、「ノンバイオレンス」というあり方を支えているのです。
「タオイズム」の考えは、水にたとえると分かりやすくなります。
- 水が、高いところから、低いところへ流れるように、すべての物事は、なるようになっていく。
- 水は、四角形のいれものに入ると四角くなり、円形のいれものにいれると円くなるように、その場、その場で、最適な形になる。
つまり、「全てのものには、なるようになっていく力があるので、あるがままを受け入れ、見守る」という考え方です。
そんな「タオイズム」の考えを取り入れた「ハコミセラピー」には、価値観の押しつけがありません。
人の考えや思いに対して、ジャッジ(判断)をしないのです。
その人にとって、そのときに必要なことが起きているから、あるがままに受け入れていこう。
その人を信じて、その人に寄り添っていけば、その人にとって必要なことが起き、その人の癒しにつながる。
「ハコミセラピー」の底辺には、そんな考えが流れています。
驚いてしまうほど、クライエント(相談者)中心の考え方。
ですから、相手の考えを無視して、セラピーを進めることはありません。
相手の存在を、とことん尊重しているからこそ、「ノンバイオレンス」が実践できるのです。
「ハコミセラピー」で用いる「ラビング・プレゼンス」
「ハコミセラピー」が「ノンバイオレンス」であるのは、「ラビング・プレゼンス」の手法によるところも大きいです。
「ラビング・プレゼンス」は、英語で「Loving Presence」と書きます。
直訳すれば、「存在を愛する」ということ。
目の前にいる相手の存在から、愛を受け取り、味わう。
それが、「ラビング・プレゼンス」です。
「ハコミセラピー」を行う際、心理セラピストは、クライエント(相談者)に対して、「ラビング・プレゼンス」を行います。
クライエントを「問題のある人」と見るのではなく、「愛のある存在。問題を解決する力がある存在」として見るのです。
「ハコミセラピー」の手法のうち、一番大切で、基本となる手法が、「ラビング・プレゼンス」。
「ハコミセラピー」を学ぶとき、参加者同士で、何度も何度も「ラビング・プレゼンス」をおこなってるんですよ。
「ハコミセラピー」が「ノンバイオレンス」を実践できているのは、「ラビング・プレゼンス」という手法を取り入れているから。
相手からの愛を受け取りながら、相手と接していたら、「バイオレンス」が起きるはずがありません。
※「ラビング・プレゼンス」については、こちら。
「ハコミセラピー」と「ノンバイオレンス」
「ハコミセラピー」は、いたるところに、「ノンバイオレンス」があふれています。
いくつかの例をご紹介しますね。
グループワークで受容される
※「日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク」のホームページより引用
私が学んでいる「ハコミセラピー」は、「日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)」が主催するもの。
グループワークをおこなうものとして、2つのコースがあります。
- Beingコース(自分らしく在ることを体験する)
- Skillトレーニングコース(技術や技法を学ぶ)
「Beingコース」の初回では、「ノンバイオレンス」について、しっかりと説明がなされたうえで。
参加者や運営者の言動が「ノンバイオレンス」と感じられた場合の対応についても、話があります。
- 相手から傷つけられたと思うときは、「私は、〇〇と言われて傷ついた」と、アサーティブに話をしてほしい。
- 相手に言いづらい場合は、運営者に相談してほしい。
初めて「ノンバイオレンス」について聞いたときは、「ふ~ん」ぐらいにしか思っていなかったのですが。
「Beingコース」に参加するうちに、「ノンバイオレンス」を実感するようになりました。
きっかけは、「Beingコース」に参加したばかりの頃、阿部優美さん(JHENの運営者の1人)から言われたこと。
せっかくだから、体験をシェアする時に、思ったことをみんなの前で伝えてみるといいよ。
ハコミの良さを実感するには、飛び込んで、泳いでみたほうがいいから。
「お金を払ってる分、元を取らなきゃ」と思った私。
シェアの時間には、勇気をふりしぼって、自分の体験をみんなの前で話してみました。
- ほかの人には知られたくない、ネガティブな体験や感情。
- 高野雅司さん、阿部優美さん(JHENの運営者たち)に対する、批判的な意見(文句、苦情)。
どんなことを話しても、グループワークをリードする高野雅司さん、阿部優美さん(JHENの運営者たち)は、「話してくれてありがとう」と言います。
別な心理療法の研修会では、参加者からの批判的な意見を受けて、あからさまに腹を立てた運営者を見たことがあります。
ところが、「ハコミセラピー」を運営する二人には、上から目線とか、偉ぶった様子が、全くありません。
運営者だけでなく、グループワークに参加するメンバーも、同じです。
私が、言うこと、やること、なすこと、すべてを。
「そうなんだね」と、そのままに受け入れてくれます。
私以外の参加者の言動が、すべて受け入れられていく様子も、目の当たりにします。
- グループワークの最中に横になり、グーグー寝ていても、OK。
- 「ハコミなんて、意味がない。二度と来ない!」と宣言しながら、次の機会にやってきても、「よく来たね」と歓迎される。
私は、私のままで、この場にいてもいいんだ。
「ノンバイオレンス」で満たされた空間にいると、私の存在が受け入れられていくのを実感します。
すると、安心して、自分の心を開くことができるようになりました。
セラピストからジャッジされない
私自身、「ハコミセラピー」の個人セッションを受けて、いたく感銘を受けたのが。
ジャッジされないこと。
たとえば、とある心理療法で、「生きづらさに対して、自分が求めるもの」を探っていったときのこと。
私は、私を疎外するような集団に対して、「皆殺し」というものが浮かびました。
すると、話を聞いていた心理カウンセラーは、驚いたのでしょうね。
私をはれものにさわるように扱い出したのです。
心理療法では「受容」が大切にされています。
心理カウンセラーがクライエントのことを、そのままに受け入れる、ということです。
ですが、心理カウンセラーも、一人の人間。
自分の価値観に合わない人間を、心の底から受け入れるのは難しいのです。
ところが、「ハコミセラピー」のセラピストは違います。
あくまでも、クライエント・ファースト。
私から出てきたものを、「ハコミセラピー」でジャッジされることはありません。
もし、私が「皆殺し」と言ったとしたら、「ハコミセラピー」のセラピストは言うはずです。
「じゃあ、思いっきり、『皆殺し』を体験してみましょう」
イメージの中などで、思いっきり「皆殺し」を体験して、怒りをはき出したら。
その裏にある、悲しみや傷つきといった、私の本当の思いに触れることができたに違いありません。
「ハコミセラピー」のセラピストは、クライエントのことを何らかの価値基準でジャッジしません。
「ノンバイオレンス」の精神が、本当の意味で身についているからです。
「ノンバイオレンス」に満たされた環境にいるうちに、私のツライ思いは溶かされていきました。
「バイオレンス」を感じるときに気をつけたいこと
私が体験したさまざまな心理療法の中でも、ダントツに「ノンバイオレンス」である「ハコミセラピー」。
そんな「ハコミセラピー」でも、「バイオレンス(暴力)」を感じることがあります。
たとえば、
- グループワークに参加している人が、他の参加者が傷つくようなことを言ったり、やったりする。
- その参加者が、悪気があってしていることではないと分かっても、傷ついてしまう。
- グループワークの運営者の言動に不満を覚える。
実際、私自身、別の参加者の言動に傷つくことがあり、運営者の二人に相談したことがあります。
二人は、私の話に耳を傾けてくれたうえ、でき得る範囲で対応してくれ、とても安心しました。
ただし、気をつけなければいけないことがあります。
「バイオレンス」と感じるか否かは、その人の体験が大きく影響する。
幼いころから傷つけられた体験が多い人ほど、ささいなことで「バイオレンス」を感じてしまう。
実は、私も、「Beingコース」のグループワークで、「バイオレンス」を感じたとき。
自分の体験が影響しているということに、気づいていました。
私自身、母から罵倒され、ののしられて育ってきたという過去があります。
母が私に対しておこなってきたことと、別の参加者がしていることが似ていたから、過敏に反応してしまったのです。
そのため、私が過敏に反応しているだけかもしれないことも、運営者の二人に伝えました。
そして、過敏に反応していることについては、自己探究の材料にしていきたいと話すと、二人は「成長したね」とほほ笑んでくれました。
私が、相手の言動に「バイオレンス」を感じたときに。
相手のせいにして、おしまいにするのではなく、自分自身と向き合えるようになったのも、「ハコミセラピー」の「ノンバイオレンス」のお陰です。
いかがでしたか?
今回は、ツライ思いを溶かす「ハコミセラピー」の魅力の1つ、「ノンバイオレンス」についてお伝えしました。
「ハコミセラピー」の魅力は、奥が深すぎて、説明するのが難しいんですよね~。
別の記事でも紹介していきますので、お付き合いいただけるとありがたいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※「マインドフルネス」を用いてセッションを行う「ハコミセラピー」の醍醐味については、こちら。